『こっち向いてよ向井くん』で考える“人生の選択肢” シンデレラではいられない時代に

『こっち向いてよ向井くん』で考える人生

 一方、現代の女性はシンデレラにはなれない。否応なく現実的な問題に向き合わされるからだ。特に、出産。35歳以上で初めて子供を産むことを高齢出産と呼び、それ以前の年齢で出産するよりも妊娠時や出産時のリスクが高まると言われている。そのことが常に頭のどこかにあるから、自分は将来結婚したいのか、子供を持ちたいのかを比較的早い段階で考えるし、結婚して子供を持ちたいと思ったら、それなりに自ら行動を起こす必要があるのだ。

 もちろん、男性だって無関係じゃないし、ちゃんと将来を見据えて行動している人はいる。だけど、向井くんは何となく結婚して子供が欲しいと思ってはいるものの、本当に自分がどうしたいかは考えたことがない。だから、自分の目の前に現れた女性たちの明確な意思に流されていってしまう。

こっち向いてよ向井くん

 そんな彼に、「あなたはどうしたいの? どうしたかったの?」と真正面から問いを突きつけるのが洸稀(波瑠)だ。彼女もまた明確な意思を持っていて、同僚の環田(市原隼人)と恋愛中だが、付き合いたいとも結婚したいとも思っていない。一方、向井くんに3年ぶりに連絡してきたチカ(藤間爽子)は結婚願望が強く、そのために婚活に励んでいる。一度は結婚したものの、夫である元気(岡山天音)との間にある婚姻事実はノイズでしかなく、できれば解消したいと考えている麻美(藤原さくら)のようなタイプも。彼女の場合は、子供がいらないと思っているわけじゃないが、もし子供ができて結婚していないことで面倒な問題が浮上しても、元気が元気のままでいられるなら「受けて立つ」とすら思っている。そんな彼女の宣言を受けて、母・公子(財前直見)が語った言葉が印象的だ。

「お母さんたちの時代って(中略)言われるがまま、当たり前を当たり前として受け入れて生きてきた時代でしょ。だから麻美たちの世代ってすごいなって思うし、正直めんどくさい時代になったとも思う」

こっち向いてよ向井くん

 結婚・出産を含め、いろんなことが自由に選択できるようになった時代。その分、現実的な問題と照らし合わせながら、決めなきゃいけないことがたくさんあって大変だ。だけど、誰かに自分の人生を勝手に決められるよりはマシと思ったら、ある意味それは贅沢な悩みなのかもしれない。『こっち向いてよ向井くん』では、向井くんにツッコミをいれつつ、自分で選べることの幸せを噛み締めながら、「じゃあ自分はどうしたいのか?」について思いを巡らせたい。

■放送情報
『こっち向いてよ向井くん』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:赤楚衛二、生田絵梨花、岡山天音、藤原さくら、財前直見、森脇健児、内藤秀一郎、上地春奈、岩井拳士朗、若林時英、田辺桃子、久間田琳加、市原隼人、波瑠
原作:ねむようこ『こっち向いてよ向井くん』(祥伝社フィールコミックス)
脚本:渡邉真子
演出:草野翔吾、茂山佳則ほか
音楽:FUKUSHIGE MARI
チーフプロデューサー:三上絵里子
プロデューサー:鈴木将大、柳内久仁子、妙円園洋輝
協力プロデューサー:福井芽衣
制作協力:AX-ON、ダブ
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ
©︎ねむようこ/祥伝社フィールコミックス
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/mukaikun/
公式Twitter:@mukaikun_ntv
公式Instagram:@mukaikun_ntv

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる