『VIVANT』堺雅人の手に汗握る侵入ミッション バルカ編でわかった乃木の行動原理

『VIVANT』堺雅人の侵入ミッション

 炎天下の日本列島は、灼熱の砂漠を思わせる酷暑とまばゆい光線で満ちていた。そんな7月30日に放送された『VIVANT』(TBS系)第3話は、異郷の地で生き延びることの困難さを余すところなく伝えた。

 バルカから隣国のモンゴルへ。警察の包囲網を突破し、死の砂漠を通過する脱出行は過酷を極めた。昼夜兼行でラクダの背に揺られる乃木(堺雅人)、野崎(阿部寛)、薫(二階堂ふみ)、ドラム(富栄ドラム)の4人だったが、最後尾にいたはずの薫の姿が見当たらない。引き返そうとする乃木を野崎は押しとどめる。野崎が与えたタイムリミットは8時間。それまでに戻らなければ2人を置いて行くと告げた。

 地平線まで広がる砂の丘と青空のコントラストを観ていると、これが現実の風景であることを忘れそうになる。その景色の中にいる演じ手は、自然そのものを相手に生身の感情を表出する。息切らせて砂丘を登りながら、別人格との一人二役を堺雅人は具現化した。薫を発見し、さえぎるもののない砂の大地を進む道のりは果てしなく遠く、ラクダを乗り捨てて徒歩で進む絶望的な行進と人影を見出した瞬間の安堵感に、前のめりになって見入ってしまった。

 バルカ編のエピソードを通じてわかったのは、乃木というキャラクターの行動原理だ。命を助けてくれたジャミーン(Nandin-Erdene Khongorzul)や薫に恩返しする心情や現地の文化や習俗を尊重する姿勢、動物をいたわる優しさ。幼少期の記憶や特殊能力(重さが10グラム単位でわかる)、別人格については追って明かされるのだろうが、少なくともA面の乃木は他者のために行動する人間だとわかる。

 それらを踏まえた帰国後の第3話後半は、漏れ出ていた乃木の普通ではない面が発揮される展開となった。帰国早々、乃木を待ち受けていたのは同僚の疑惑の眼。上司でエネルギー事業部部長の宇佐美(市川猿弥)や誤送金回収を命じた専務の長野(小日向文世)の前で、乃木は事の次第を問いただされる。丸菱商事とすれば、状況証拠から言って乃木を疑うのは当然ではある。しかし、野崎は別の可能性を疑っていた。

 宇佐美と長野、乃木の部下で直前まで端末を操作していた水上(古谷呂敏)、経理部長の原(橋本さとし)、財務部で1億ドルの送金処理をした太田(飯沼愛)。誤送金ができたのはこの5人の誰かで、野崎の推理ではこの中にテロ組織・テントに協力する工作員(モニター)が潜んでいると言う。あるいは、誤送金を利用してテントの正体を探る自衛隊の別組織・別班であるとも。

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