『VIVANT』阿部寛は“変人ハイスペヒーロー”の役が似合う! 持ち味が最大級に光る野崎役
「採算度外視?」と感じてしまうほど、日本のドラマとは思えないような雄大なロケ映像やら、主役級の俳優がズラリと共演していることで、初回からドラマ好きを大興奮させている『VIVANT』(TBS系)。話題のポイントだらけだが、ここでは俳優・阿部寛にフォーカスしてみたい。
阿部が演じる野崎守は、最初は外交官だとウソをついていたが、実は警視庁公安部・外事第4課の刑事。初回では絶体絶命の状況に陥った乃木憂助(堺雅人)を間一髪で助けるという、特撮ヒーロー的な登場を果たした。だが信頼できる味方なのか今ひとつわからない状態のまま、他に選択肢のない乃木は行動を共にすることになる。
この野崎、全体的にノリが軽い。逃走に成功して「フウウーーーッッ」、馬に乗って「ハイヤーーッッ!」、としょっちゅう雄叫びをあげている。
その昔は、背が高くて声が低く、カッコいいビジュアル、そして主役を支える二番手的な位置づけのキャラなら“無口”が定番だった気がするが、今回の野崎は全体的におしゃべりだ。阿部の声のトーンもいつもより少し高めで、深刻な場面でも茶化しているような軽やかな口調。軽やかに文句を言いながら、決めるとこはしっかり決める、一番美味しい役とも言える。
そしてビジュアル。彼の大きな特徴のひとつが、映画『テルマエ・ロマエ』でイタリア人をも納得させ、『VIVANT』では今のところの最大の敵、チンギス(Barslkhagva Batbold)に「アラブ系だと思ってた」と言わせる顔の濃さだが、第2話でアラブ風の扮装をした姿も違和感なさすぎだった。古代ローマ人もアラブ系もなじむとは、なんと濃い顔なのか、との思いを強くした。果てのない砂漠や草原の広大な景色に、顔が負けてない。
そして野崎、たった2話の間にできることが多すぎた。刑事なのでダンプの運転などはこの際“標準装備”と考えるとして、それ以外にも、敵をチョークスリーパーで絞め落とすなど、軽めとはいえアクションに長けている、爆破事故で負傷した乃木の傷を縫合(後で本物の医師、柚木薫(二階堂ふみ)に「上手」と言われている)、乗馬はもちろん“乗ラクダ”で砂漠越えの経験あり、しかも料理上手で、現地の食材で和食を披露……とハイスペ過ぎる!
何でも屋のドラム(富栄ドラム)という切り札を抱えていたり、同じ部署の新庄浩太郎(竜星涼)が献身的にサポートしてくれたりと、助けの手札をいくつも持っていて、追い詰められても瞬時に乗り越える方法を思いつき、さらにそれを実行する胆力もあるヒーローだ。さらに、「プランB」をすぐ出せたり、「全て先を見越して行動する、それが仕事の基本だ」と、先読みの大事さを繰り返している。また第2話では、危うくバルカ警察に発見されそうになったところを、抜群の嗅覚で察知し回避した。
というか、第2話の段階ではほとんど阿部が主役かのように活躍している。「VIVANT」という言葉が「別班」(自衛隊の影の諜報部隊らしい)という意味なのではないか、と推察したのも阿部だ。