『らんまん』前原滉と亀田佳明の情熱が進化に繋がる 万太郎の迷惑な側面も
「君は何を見ているんですか。君はよく顕微鏡をのぞいていますよね」
野宮の唐突な質問に対する波多野の答えが秀逸だった。「僕は今は見えないってことを見ています」と話す波多野の言葉を意訳するなら、ただ見るのではなく、探究しているということになる。受粉によって植物の内部で起こる変化や肉眼で見えない事象を、見えるものを手がかりにして探究する。観察と実験を通して自然の神秘に迫る科学の営みに、野宮は強烈な印象を受ける。フィクションではない現実の生命の「源をいつか描いてみたい」。絵師の本能が植物学という対象と結びついた。
変化に適応し、進化を遂げてきたのが植物の歴史で、野宮も波多野とタッグを組むことで、画家として進化しようとしている。そのきっかけは万太郎がもたらしたもので、つくづく罪な男と思うが、植物学に携わらない周囲の人々から見たら、万太郎もその辺の亭主と変わらない。タキ(松坂慶子)の墓参と各地の植物採集に出かける夫を見送った寿恵子(浜辺美波)が、お腹の子どもに「お母ちゃんとの楽しいお留守番」と話しかけるシーンは、少なからず葛藤を感じさせる場面だった。さりげなく万太郎が周囲に迷惑をかけている事実が書き込まれていることも、本作の特徴である。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、広末涼子、松坂慶子ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK