『らんまん』野宮は万太郎に自身との“相似”を見た 亀田佳明が表現するやるせなさと矜持

『らんまん』亀田佳明が表現する野宮の矜持

 植物図鑑創刊に向けて迷いのない万太郎(神木隆之介)とは裏腹に、田邊教授(要潤)を筆頭に様々な人間の焦りや葛藤が充満する植物学教室の様子が描かれている『らんまん』(NHK総合)。

 こんなとき、万太郎と同様に東大の学生ではないながらもこの教室に出入りを許されている画工・野宮(亀田佳明)は、学生らの悩みをどう捉えているのだろうか。野宮自身、元々は植物には興味がないながらも田邊教授に絵の才能を見込まれヘッドハンティングされる形で植物学教室の“お抱えの画工”となった経緯を持つ。本当は西洋画の技巧を凝らした人物画などを描きたいようだが、ある意味割り切って仕事として植物画を描いているのだ。

 最初は万太郎のことを“よそ者”と一蹴し素っ気ない態度を取ったり、立場は違えど植物学教室の一員として研究に携われることを純粋に喜ぶ万太郎に「これでひとまず安泰じゃないですか? 教授の役に立つうちはここにいられますから」と、現実の厳しさをチクリと伝え水を差す野宮だった。しかしこれは彼が自分自身に日頃言い聞かせていることなのだろう。たった一言で一瞬にして不穏な空気を醸し出したり、心にざらりとした感触を与える野宮は登場当初から気になる存在感をずっと放っていた。自分が描きたいものを描くのではなく、まず第一に教授からのオーダーがあって初めて筆をとることができる自身の立場をやるせなく思う部分もきっとある中、それでも職業画工としての矜持も滲ませる。

 初めて万太郎の描く植物画が目に入り、感心する野宮の表情もまた印象的だった。研究成果云々よりも、何より誰よりも植物を愛しすぎている万太郎を前に、純粋に心配する気持ちもあるのだろう。絵を描くことが好きな気持ちが第一にありつつも“田邊教授の意向”という暗黙の圧力にずっと晒され続け、その枠組みからはみ出せない自分と今後万太郎が辿るだろう未来が重なるところもあったのかもしれない。

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