人をイラつかせる天才!? 『ハリー・ポッター』アンブリッジ先生の生い立ちを解説

『ハリー・ポッター』アンブリッジ先生を分析

ヨーロッパの暗い歴史を暗示するアンブリッジ

 残忍な性格で、権力を追い求めるアンブリッジは、「上の言うことは間違っていない」と従順に従う人物でもある。この権威主義はファシズムを思わせ、彼女がホグワーツで新たに作った校則のように、人々の自由を奪うものだ。そもそもヴォルデモートがアドルフ・ヒトラーを想起させるキャラクターで、純血主義でマグル生まれを迫害する彼らは、ユダヤ人を迫害したナチスそのものだろう。

 アンブリッジの上司であるファッジは、ヴォルデモートの復活という都合の悪い現実から目を逸らし、魔法省の権威を強めようとした。アンブリッジもまた、権力のため、そして自らが持つ差別意識の正当性を信じるために、これに協力することになる。知らず知らずのうちに邪悪な人物に権力を持たせてしまった魔法界は、アンブリッジのような権力に従順な者たちによって、さらに危機的な状況に陥っていく。彼女は政府や権威の言いなりになる人々を体現しているのだ。

 全身ピンクの服をまとい、ピンクに塗り替えられたオフィスの壁一面に猫が描かれた絵皿を飾っているアンブリッジは、強力な魔女ではないが、非常に危険な人物だ。『不死鳥の騎士団』での彼女の最後のシーンは笑えるものだが、それ以降も魔法省に勤務していたことを考えると、ファッジらの人を見る目はどうなっているのか疑問が残るところだ。アンブリッジを演じたイメルダ・スタウントンは、人の神経を逆なでする彼女の甲高い声や、癇に障る笑い声などで、この人格に問題のある人物を巧みに演じている。悪役は観客に憎まれることが仕事。スタウントンには拍手を送りたい。

■放送情報
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』
TBS系にて、7月1日(土)18:51~放送
原作:J・K・ローリング
監督:デイビッド・イェーツ
脚本:マイケル・ゴールデンバーグ
出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、ヘレナ・ボナム=カーター、レイフ・ファインズ、マイケル・ガンボン、ゲイリー・オールドマン、アラン・リックマン、イメルダ・スタウントン
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