『どうする家康』細田佳央太、眞栄田郷敦ら若手が爪痕残す 初の大河ドラマ出演での新境地

『どうする家康』初大河で若手が残す爪痕

 放送中の大河ドラマ『どうする家康』(NHK総合)では、文字どおりの“若手”が台頭してきている。主人公・徳川家康(松本潤)の息子である信康を演じる細田佳央太がその一人であり、彼らと敵対する武田信玄(阿部寛)の息子である武田四郎勝頼を演じる眞栄田郷敦がそうだ。並み居る若手俳優の中でこのポジションを得た2人から目が離せないというものである。

 信康を演じる細田はこれが初めての大河ドラマ。『町田くんの世界』(2019年)で主演を務めて以降、映画ファンにはよく知られた存在だが、彼の名がより広く浸透してきたのはここ数年のことではないだろうか。『ドラゴン桜』第2シリーズ(TBS系)や『家庭教師のトラコ』(日本テレビ系)での高校生姿が記憶に新しい。この2作で彼を知った人々からすれば、『どうする家康』での信康役には驚きだろう。最初こそどこか頼りない父・家康に似たところがあったものの、いまでは雄叫びを上げて刀を振るい、つねに好戦的な態度を見せている。高校生姿とは似ても似つかない状態だ。彼のキャリアからいえば“新境地”だといえる域に踏み込んでいるところだろう。

 これまでの細田は「心優しい少年像」をいくつも立ち上げてきた。タイトルロールを務めた『町田くんの世界』しかり、高校生のひと夏の冒険を描いた『子供はわかってあげない』(2021年)もしかり。そればかりか、公開中の主演映画『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』は“やさしさ”に関する主題を持った作品だ。彼は演技では決して到達することのできない資質としての優しさを持っている稀有な存在なのである。これらのことを踏まえると、細田が信康役に起用されたことにも納得。信康は自身の内にある優しさや正義感を戦乱の世で維持することができず、それが歪んで狂気となる。細田本人の資質である優しさは本作における徳川家康像と重なり、ここ最近は狂気を演じることによってそこから逸脱してみせた。たんに荒くれ者を演じているわけではなく、こういった変化の流れを滑らかに表現してみせていることこそ、“新境地”といえるものだろう。

 対する勝頼を演じる眞栄田もまた、この『どうする家康』が初めての大河ドラマとなっている。俳優デビューからまだ4年ほどの存在とあって、子役をのぞけば“最若手クラス”の俳優だろう。デビューの年である2019年から年に1本はプライムタイムの地上波ドラマでのレギュラー出演を果たし、顔と名前を売り、演技者として力をつけてきた。そして若手俳優の中で自身のポジションを不動のものとしたのが『エルピス —希望、あるいは災い—』(カンテレ・フジテレビ系)だろう。同作ではテレビ局の若手ディレクターに扮し、現代社会の暗部に踏み込んでは飲み込まれていく存在を等身大で体現していた。その一方、映画では大人気作『東京リベンジャーズ』シリーズに登場し、マンガのキャラクター然としたフィクショナルな人物に息吹を与えている。まだキャリアは浅いものの、この振れ幅の大きさに驚かされる。

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