数字とアートで見る『アクロス・ザ・スパイダーバース』 240人のスパイダーマンが登場
北米公開後3日間で興行収入1億2066万ドル(約168.9億円)、さらに公開10日後には2億2553万ドル(約315.7億円)を達成。『スパイダーマン』シリーズの最新作『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』は、今までとは何から何までスケールが違う。
早くも北米・海外では、前作『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018年)の興行収入を上回る大ヒットとなっている本作。日本でも大きな話題が集まる中、今回は「数字」という観点、そして鮮やかなコンセプトアート&スケッチから、この作品の圧倒的なスケールとクリエイティブに切り込んでみたい。
ブルックリンの高校生マイルス・モラレスは、マルチバース(多元宇宙)に存在する仲間たちとの共闘を経て、“親愛なる隣人”スパイダーマンとして日夜悪党と戦っていた。ある日、マイルスは、スパイダー・グウェン/グウェン・ステイシーと再会し、再びマルチバースに飛び込む。
そこでマイルスが出会ったのは、リーダーのスパイダーマン2099/ミゲル・オハラや、スパイダーウーマン/ジェシカ・ドリューら精鋭たちで構成されるスパイダーマンの最強チーム。彼らの一員に加わりたいマイルスだが、そこでミゲルから“スパイダーマンとしての運命”を知らされる。それは、愛する人とこの世界の両方を救うことはできないということ。しかしマイルスは運命に抗い、その両方を必ず救うと誓う。その決断は、マルチバースに史上最大の危機をもたらすことになり……。
『スパイダーバース』シリーズ最大の特徴は、まるでコミックがそのまま動き出したかのようなアニメーション。前作ではさまざまなユニバースから集まったスパイダーマンたちが、3DCGと手描きの融合によって、それぞれ異なるスタイルで表現された。しかし今回は、前作とは異なり、主人公のマイルスがマルチバースへと飛び出していく。
本作『アクロス・ザ・スパイダーバース』に登場する主なユニバースは“5”つ。マイルスの暮らすユニバース(アース1610)をはじめ、グウェンの住むユニバース(アース65)、スパイダーマン2099率いるチームの本部があるヌエバ・ヨーク(アース928)、スパイダーマン・インディアが住むムンバッタン(アース50101)、そして1970年代のロンドンを彷彿とさせるスパイダー・パンクのユニバースだ。
前作はマイルスのアースにさまざまなルックのキャラクターが現れる趣向だったが、今回はユニバースの画風も違えば、そこにいるキャラクターのトーンも違う。マイルス&アース1610は前作と同じテイストだが、グウェン&アース65は水彩画調、かつ現代のコミックを参照したもの。スパイダーマン・インディア&アース50101は、インドで60年代から刊行された『インドラジャル・コミックス』誌に影響を受け、独特な線画の背景が特徴的だ。
また、スパイダーマン2099がいるヌエバ・ヨークのデザインは、『ブレードランナー』(1982年)を手がけたシド・ミードに大きな影響を受けたもの。スパイダー・パンクのユニバースは、イギリスのパンクシーンにあった、新聞・雑誌・コミックなどをコラージュする文化に敬意を捧げるものとなった。
この広大なマルチバースに登場するキャラクターの数は、なんと合計“600”人(厳密に言えば人間だけでなくネコや馬も登場するので、600体というのが正しいだろうか)。そのうち“240”人がスパイダーマンだというから、その一人ひとりをデザインする作業を考えるだけで気が遠くなりそうだ。