『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』北米で大絶賛 前作比3.4倍の好発進

『スパイダーバース』続編、北米で大絶賛

 ハリウッドのサマーシーズンに思わぬ伏兵と言うべきか、それともスーパーヒーロー映画の本領発揮と言うべきか。6月2日~4日の北米週末興行収入ランキングは、ソニー・ピクチャーズ製作『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』が初登場No.1。事前の予想を上回る1億2000万ドル超えのロケットスタートとなった。

 本作は3日間で1億2050万ドルを稼ぎ出し、事前の予測を超える初動成績を達成。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』の1億1841万ドルを超えて、現時点で今夏最高、また2023年公開作品では『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』に次ぐ今年第2位の滑り出しとなった。

 映画版『スパイダーマン』シリーズとしては、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021年)の2億6013万ドル、『スパイダーマン3』(2007年)の1億5111万ドルに続く史上第3位。また、アニメーション映画としては『トイ・ストーリー4』(2019年)に次いで歴代第6位となった(ソニー製作のアニメーション映画としては史上最高だ)。

 前作『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018年)は、少年マイルス・モラレスが新たなスパイダーマンとして目覚め、スパイダーマン/ピーター・B・パーカーやスパイダー・グウェン/グウェン・ステイシーらマルチバースの仲間たちと協力して活躍するストーリー。コミックがそのまま動き出したかのようなアニメーション表現が衝撃を与え、アカデミー賞(長編アニメ映画賞)など数々の映画賞に輝いた。

 もっとも、アニメーション映画の革命と称されるほどの高評価を得た前作も、実はオープニング成績は3536万ドルと控えめだった。その後の口コミ効果が、世界興収3億8425万ドルという大ヒットにつながったのである(製作費は9000万ドルだった)。

 『アクロス・ザ・スパイダーバース』の1億2050万ドルという初動成績は、なんと前作の3.4倍。いまや『スパイダーバース』ブランドが大きな信頼を寄せられている証明だろう。北米では観客の67%が18歳~24歳という青年層となった(アニメーション映画よりも実写スーパーヒーロー映画の傾向に近い)。もちろん、SNSやTVにおけるキャンペーン、企業・ゲームとのタイアップ、大型街頭広告などプロモーション戦略の勝利とも言えそうだ。

 本作の製作費は1億ドルで、宣伝・広報費を鑑みれば、黒字化にはもう少しだけ時間を要する見込み。一般的なスーパーヒーロー映画に集客の傾向が近づく場合、“ヒーローもののお約束”である2週目の大幅下落も懸念されるが、これを左右するのがやはり口コミ効果だ。今回も極めて高い評価を得ているだけに、思わぬ伸びを見せることも考えられる。

 Rotten Tomatoesでは批評家95%・観客96%というハイスコアとなったほか、出口調査に基づくCinemaScoreでは「A」評価を獲得。別の調査でも観客の82%が「強く薦める」と回答した。より洗練され、より先鋭的になったアニメーション表現と、フィル・ロード&クリス・ミラー脚本・製作による密度の高いストーリーテリングで、新たな観客をどれだけ呼び込めるか。

 すでに海外59市場でも3日間で8810万ドルを記録しており、全世界累計興収は2億860万ドル。特に優れた成績となったのは、中国の1730万ドル、メキシコの1160万ドル、イギリスの1150万ドルだ。日本公開は6月16日、スパイダーマンが大きな人気を誇る日本国内の反応にも期待したい。

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