『あなたがしてくれなくても』みちと楓がついに対峙　「心も体も愛されたかった」の意味

　1つ欠けたパズルのピース。陽一（永山瑛太）は気にせずそのまま店に飾り続け、誠（岩田剛典）は3日間口を利かなくなるほどこだわり、ついには新しいパズルを求めた。そんな正反対な言動に、2人が迎える結婚の行末が暗示されているようだった。

　木曜劇場『あなたがしてくれなくても』（フジテレビ系）第8話のキーワードは「心の死」ではないだろうか。「不倫は心の殺人」なんていう言葉を見かける。それくらい一生を誓った相手に裏切られることはダメージの大きなものだからだ。だが、人は他の人からすれば「たかが」と思うようなことでも、心が死ぬものだ。それは、後からどんなに償われたとしても、すぐに元通りというわけにはいかない。心が「死ぬ」というのは、そういうことだ。

　結衣花（さとうほなみ）のもとに、かつての不倫相手の妻・鞠子（佐藤めぐみ）が訪ねてくる。3年前の不倫。そして今はもう会ってもいないと言う結衣花にとって、鞠子の慰謝料請求や突然の訪問は「なぜ今さら？」と思ってしまうものだったかもしれない。

　しかしこの3年間、鞠子は心から笑うことも怒ることもできなくなっていた。もちろん、夫と愛し合う喜びもない。「私の心は死にました」という鞠子の言葉に、改めて自分のした罪の大きさを知った結衣花。そして、その話を聞いていた陽一も……。

　きっと、陽一にとって結衣花との衝動的なセックスは、みち（奈緒）には申し訳ないとは思いつつも、どこかで「たった1度だけ」「みち以外の女性とならできるのか試したかっただけ」「みちならずっとそばにいてくれるはず」などと思い込んで、罪悪感を軽くしようとしていたのではないだろうか。

　それは結衣花が「不倫したのは男のせい」「不倫のループから抜け出せないせい」「幸せになれない自分かわいそう」なんて言い訳していたのと同じように。反省した結衣花は請求された慰謝料を全額支払い、陽一のカフェを辞めてけじめをつけようとする。もちろん安い金額ではないけれど、慰謝料をもらったところで鞠子の心は決して生き返らないし、陽一と結衣花の関係性も完全にクリアになるわけではない。それでも自分なりに清算をしてスッキリした顔で立ち去ることができるのは、結衣花が独身だから。

　対して、陽一はそうはいかない。真に迫る鞠子の言葉、そしてオーナーの高坂（宇野祥平）に「欠けたものを置いてると大事なものを失くす」と言われて、なくなったパズルのピースを慌てて手作りし埋めようとする。それは紛れもなく、みちを失いたくないという思いからなのだろうけれど、パズルを作るよりももっとやるべきことがあるような気がしてならない。

　陽一と顔を合わせたくないがゆえに、残業を続けるみち。夕飯として食べているのはコンビニで買ったと思われる冷やしたぬきうどん。そして、自宅ではみちの分として陽一が買って冷蔵庫に入れておいたのも、冷やしたぬきうどんだった。そんなところに2人の歩んできた日々を、そして陽一の不器用な優しさを感じずにはいられない。通じ合っている部分がまだあるからこそ、すれ違い続けるみちと陽一の姿がより一層切ないのだ。