『あなたがしてくれなくても』みちと楓がついに対峙 「心も体も愛されたかった」の意味

『あなたがしてくれなくても』心を殺す不倫

 一方、みちに心を殺されたと主張するのが、誠の妻・楓(田中みな実)だ。誠とは体の関係はなかったけれど、“心の”不倫相手であることは確かであることから、平謝りのみち。しかし、楓がみちと誠が近づいたきっかけを聞き、「たがかレスごときで」と言ったのには我慢ならなかった。

 楓が「たかが」と言い放ったセックスレスに、パートナーが向き合わなかったことで心が死んでいったのだとみちは訴える。それは誠が楓に言えなかった本音。みちとだけ共有できた思い。みちの言葉に誠の姿が重なった楓は、それ以上みちを責めることができなくなる。

 「あなたさえいなければうちは何も問題なくうまくいっていた」という楓の言葉は、楓がそう思い込みたかっただけ。じわじわと楓は誠の心が死んでいくのに気づいていたけれど、見て見ぬふりをしてきた。「仕事が忙しいんだから仕方ない」「今が正念場なんだから仕方ない」「仕事をしている私が好きだといってくれていたはず」と言い訳しながら。

 何度も言うが、一度死んだ心は生き返らない。いざ夫婦の危機を実感して誠を「したい」と誘うも、誠の体は楓を拒んでしまう。そして、パズルのピースを作り、きっと夫婦仲もうまくいくはずだと勢いづけて誘った陽一のことも、みちは受け入れることができない。

 誠とみちは、それぞれのパートナーと向き合っていこうと決めたはずだった。奇しくも思い出の砂時計も割れてしまったし、誠の転職先も決まってもう日常的に顔を合わせることもなくなる予定だった。それでも、死んだはずの心に寄り添ってくれた人が忘れられない。もしくは、心を死なせた人をどこかでずっと許せないというのもあるのかもしれない。

 セックスは肉体上の欲望と思われているが、つくづく夫婦にとっては精神的なものなのだと考えさせられる。「心も体も愛されたかった」の意味が、こうしてドラマで丁寧に綴られることでようやく伝わるような気がした。心の死の先に、真の幸せはあるのだろうか。その答えが知りたくて、不器用にもがき続ける彼らから目が離せない。

■放送情報
木曜劇場『あなたがしてくれなくても』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:奈緒、岩田剛典、田中みな実、永山瑛太、さとうほなみ、武田玲奈、宇野祥平、MEGUMI、大塚寧々ほか
原作:ハルノ晴『あなたがしてくれなくても』(双葉社)
脚本:市川貴幸、おかざきさとこ、黒田狭
演出:西谷弘
プロデュース:三竿玲子
主題歌:稲葉浩志「Stray Hearts」(VERMILLION RECORDS)
挿入歌:稲葉浩志「ダンスはうまく踊れない」(VERMILLION RECORDS)
音楽:菅野祐悟
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/anataga_drama/
公式Twitter:@anataga_drama
公式Instagram:@anataga_drama
公式TikTok:@anataga_drama

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる