『風間公親-教場0-』木村拓哉の中に残る育成への意欲 白石麻衣が涙ながらに訴える思い

『教場0』木村拓哉の中に残る育成への意欲

 薬物対策課の刑事に“実相寺実”という人物に関する捜査情報を聞き出した鐘羅(白石麻衣)。これまでの流れを鑑みれば、新人刑事たち各々のエピソードの後半は、瓜原(赤楚衛二)の時は母親との関係、隼田(新垣結衣)の時は児童虐待、遠野(北村匠海)の時は将来の職業を志す“原風景”と、いずれも彼らのバックグラウンドと重ね合わすことができるものだった。しかし今回の鐘羅の場合は、彼女の“過去”ではなく“現在”と密接に関わる事件が起きるのである。

 とある一軒家で、小田島澄香(ソニン)という女性の変死体が発見される。食卓には大盛りの料理が手付かずのまま残されており、2人分用意された食器の片方の指紋だけが拭き取られている。現場から押収されたのは、複数の人物の名前や電話番号などが記された住所録。鐘羅はそこに実相寺の名前と、同棲相手である西田徹(渋谷謙人)の名前が記されているのを見つけてしまう。そして被疑者として浮上したネット通販業者の名越(小池徹平)のもとを訪ね、彼の行動に違和感を抱いた鐘羅だったが、とどめを刺すための決め手がない。するとそこに、西田が訪ねてくるのである。

 名越が見せる強迫性障害に特有の行動――鍵を施錠したのかを何度も繰り返し確認するなど――が、彼にとどめを刺すきっかけを作り出した点を筆頭に、今回のエピソードではそうした物語の流れを生みだす、いわゆる伏線とも呼べる要素が非常に冴え渡っていたと見える。何気なく流れていたニュースの内容が、かなり恐ろしい結末と結びつき(また、そのニュースの直前に流れていた感染症の話題は新型コロナをモチーフにしたものだろうか)、ある意味でキーパーソンとなりうる“実相寺実”という人物が一切姿を見せない点もどこかミステリアスで興味深い。

 事件の解決後に、薬物対策課の捜査情報を西田に漏洩したことで守秘義務違反を追及されることになる鐘羅。クビにしてくださいと涙を見せた彼女に対し、風間(木村拓哉)は鐘羅の持つ刑事としての優れた資質を称え、交番勤務に落ち着かせる。その際に風間は、入院して治療するはずだったが、鐘羅を現場で指導することにしたのだと語る。仮に入院していたならば、風間は義眼にならずに済んだのかどうかはわからない。それでも遠野の一件があった直後でありながら、風間の中にある次の世代を育成する意欲が失われていないことがよくわかる一連だ。

 ラストで風間は、ついに鏡の前で義眼を装着する。ここから『教場』(フジテレビ系)が再び始まるかのような、象徴的なシーンと言えよう。思い返してみればSPドラマ版で「警察を呪っている」と発言していた風間。今回のエピソードの時点では、まだ意識を取り戻さないながらも遠野の復帰の可能性があることが示され、風間の道場生に対する態度も相変わらずだ。ともすると、この後にまた何か決定的な出来事が起きるのだろうか。いずれにせよ、これまでの若手刑事たちとはまるでタイプの違う中込(染谷将太)の登場は、風間道場の“最後のひとり”とは思えない雰囲気も相まって、なかなかおもしろいものになりそうだ。

■放送情報
フジテレビ開局65周年特別企画『風間公親-教場0-』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:木村拓哉、赤楚衛二、新垣結衣、北村匠海、白石麻衣、染谷将太ほか
原作:長岡弘樹『教場0 刑事指導官・風間公親』『教場X 刑事指導官・風間公親』(小学館)
脚本:君塚良一
演出・プロデュース:中江功
プロデュース:渡辺恒也、宋ハナ
音楽:佐藤直紀
主題歌:Uru「心得」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
制作・著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/kyojo0/
公式Twitter:@kazamakyojo
公式Instagram:@kazamakyojo

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