『ラストマン』は大文字の正義で終わらない 永瀬廉×今田美桜が担うドラマの恋愛軸

『ラストマン』永瀬廉×今田美桜が担う恋愛軸

 もっとも身近で悪質な犯罪。誰もが被害者、または加害者になりうる事実を、これほどわかりやすく示す犯罪はない。『ラストマン―全盲の捜査官―』(TBS系)第4話は、痴漢と冤罪をめぐって、時を超えた出会いに心震わせる放送回となった。

 皆実(福山雅治)と吾妻(今田美桜)がランニング中に遭遇した急病者。スーツ姿の男性は痛みを訴え、そのまま命を落とした。「不自然死」は死因不明の急性死や事故死を含んでおり、『アンナチュラル』(TBS系)で取り上げられたことも記憶に新しい。「事件性がない」の一言で片づけられてしまう死の裏側にあるものを、皆実と心太朗(大泉洋)は探っていく。

 浮かび上がったのは意外な真実。一見すると国家規模の要人暗殺事件だが、被害者はいずれも痴漢犯罪の常習者で、手の甲に押されたスタンプは加害者を特定するためのものだった。スタンプを作ったのは痴漢冤罪被害者の会の代表で、大学教員の真鍋(伊藤歩)。真鍋は身内が痴漢冤罪を苦にして自殺した過去があった。心太朗が言う冤罪事件の当事者がなぜ撃退スタンプを作るのかとの問いに、真鍋は「痴漢を憎んでいるのは冤罪被害者も一緒」と答える。痴漢に制裁を望む一点で、冤罪被害者と女性たちには共通の心理があった。

 第4話でスポットライトを浴びたのが技術支援捜査官の吾妻だ。心太朗の甥で捜査一課の護道泉(永瀬廉)が思いを寄せる吾妻は、男性からの性的な視線にトラウマがあった。泉の心配を無視して、吾妻は皆実の捜査に同行する。そこに新たな被害者が現れる。泉が我妻を守りたい一心で、無意識に過保護な挙動を示してしまうのは、男性中心の環境で育った影響だろうか。あるいは、まとわりつく視線を振りきって前へ進んできた吾妻のほうが、精神的に成熟しているとも言える。

 冷たくされても我妻の元に足を運ぶ泉の一途さは応援したくなる。第1話から第3話まで大きな見せ場がなかった吾妻と泉の、ちょっと甘酸っぱいすれ違いの陰に“大人”な皆実の存在もあって、同僚である2人の日常はこれからも続いていく。ほかにも心太朗と佐久良(吉田羊)がいて、事件ものの『ラストマン』で恋愛軸がほど良いアクセントになっている。

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