『らんまん』佐久間由衣はドラマに花を咲かす 綾の“女性”としての力強さは時代を越えて

『らんまん』綾の“女性”としての力強さ

 朝ドラの魅力は主人公の人生を辿るだけにとどまらず、周りの家族や友人の生き様をも見届けられることだろう。現在放送中の『らんまん』(NHK総合)も例に漏れず、主人公の万太郎(神木隆之介)を支える魅力的なキャラクターたちが活躍している。万太郎のお目付役であり、かけがえのない存在である竹雄(志尊淳)や、万太郎に多大なる影響を与えた早川逸馬(宮野真守)とジョン万次郎(宇崎竜童)。そして、当主としてあまりに頼りない万太郎に代わり、峰屋を守ろうと尽力してきた綾(佐久間由衣)の存在はとりわけ大きい。佐久間由衣が、しなやかでみずみずしく表現する綾というキャラクターは『らんまん』に力強い生命力を吹き込んでいる。

 幼い頃に酒蔵の神秘的な世界に魅了され、誰よりも酒造りに情熱を持つ綾。だが幸吉(笠松将)の力を借りて造った酒は、タキ(松坂慶子)から「さもしい酒」と言われ、飲んでもらうことすら叶わなかった。峰屋を想い、万太郎を気にかけ、まっすぐに酒造りと向き合ってきた綾だが、たったひとつ、性別が「女性」であることで夢への一歩を手にすることができずにいたのだ。

 佐久間はこうした複雑な事情を抱える綾の胸中を、繊細な芝居で視聴者へと届ける。胸の奥に秘めた酒造りへの情熱は佐久間のきらりと輝く瞳に映し出され、時に悔しい思いをして涙しても、また前を向ける強さをも表現する。そこには芯が強くしなやかな女性の姿があった。印象的なのは草の上に大の字に寝転ぶシーン。佐久間は、長身を伸び伸びと使い身体全体で綾の気持ちを表現する。その姿からは力強く伸び上がる草木に負けないパワーのようなものが伝わってくる。それは佐久間が綾を演じる中で表現する「ひたむきさ」や「まっすぐさ」からくるのだろう。万太郎が植物に魅了され研究したいと思う一方で、綾は凛と咲く花そのもののような魅力のある人だ。佐久間はそんな綾を見事に体現している。

『らんまん』綾の複雑な胸中を好演 佐久間由衣は“心のグラデーション”を魅せる

NHK連続テレビ小説の出演が“ひとつの転換期”となる俳優は多い。特にブレイク前だと本人的にも自信に繋がるだろうし、視聴者としても…

 さらに綾の魅力を開花させる要素は、酒造りへの情熱だけではない。密かに綾へ想いを寄せる竹雄との関係も、視聴者をドキドキさせている。第4週では身分の違いで想いを告げられずにいる竹雄の気持ちを知ってか知らずか、そっと竹雄の手を引いて祭りの踊りに参加。すべてを忘れて幸せそうに笑う2人の姿に、この時間がずっと続けばいいのにと願わずにはいられなかった。

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