『東京リベンジャーズ2』高杉真宙の千冬が舵を切る 観客の興味を常に刺激し続ける演技
2021年の大ヒット作『東京リベンジャーズ』の続編の公開がスタート。2部作構成である本作の前編『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』には多くの新キャラクターが登場し、そのうちの数名が物語を動かすキーパーソンとなっている。高杉真宙が演じる松野千冬もその1人だ。途中参戦を果たした高杉が本作で担っている役割にフォーカスしてみたい。
松野千冬とは、暴走族・東京卍會の壱番隊副隊長。高杉と同じく今作から参戦を果たした永山絢斗が演じる壱番隊隊長・場地圭介を尊敬してやまない男だ。今回の2部作で主として描かれるのは、東京卍會と場地の関係の行く末。前編『-運命-』ではチームを抜けた場地が敵対する凶悪な集団・芭流覇羅の一員になるまでが、後編『-決戦-』では彼のその行動の真相が明かされる展開となっている。北村匠海が扮する主人公・タケミチはこれに翻弄されることになるのだ。彼に課されているのは、場地を東京卍會に連れ戻すこと。武道の“相棒”としてこの難題に挑むのが千冬というわけである。
『東京リベンジャーズ』といえば、とにかく登場人物が多い。誰もが一様に学生服か特攻服に身を包んでおり、集団の中に混じっていると見分けるのが難しかったりもする。各集団の幹部クラスであれば見た目にも大きな特徴があるため話は別だが、その点に関して千冬は控えめな人物だといえるだろう。物語のキーパーソンであるためシーンの中心に立っているときは例外なものの、チーム全体が映し出される際の彼はその一員でしかない。
千冬を演じる者は、見た目のインパクトや、キャラクターがもともと持っている個性では勝負できない。特に、同じように派手さに欠ける主人公・武道と行動をともにする存在なのだから、観客の関心は否が応でも彼の“人間性”へと向かうことになる。その一挙一動や武道とのやり取りは、観客の興味を常に刺激し続けるものでなければならない。本作においてこのような人物を演じるのは非常に難しいことのように筆者は感じる。私たちは武道と千冬と行動をともにしていくため、作品の手触りがどのようなものになるのかは彼らにこそかかっている。しかしさすがは高杉真宙。千冬というキャラクターを見事にものにし、この世代を代表する猛者ども(=名実ともに優れた若手俳優たち)の中であっても堅実な演技で魅せてくれる。『-運命-』で披露するどこか力の抜けた軽やかなセリフ回しと振る舞いは、本作の持つコミカルで柔らかい側面をさらに強固なものに。一方、6月に公開となる『-決戦-』では本作のシリアスで熱い側面をより強調する力演に徹している。北村とのかけ合いの質を変化させることによって、作品の印象をもガラリと変えてみせているのだ。