『東京リベンジャーズ』実写化の壁を突破した圧倒的な熱量 北村匠海が弱い自分に向き合う
映画『東京リベンジャーズ』が4月15日、フジテレビ系『土曜プレミアム』にて放送される。2021年に劇場公開された本作は、最終興行収入45億円、観客動員数335万人を記録し、その年の劇場用実写映画でトップの成績を収めた。続編となる2部作『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-/-決戦-』公開を前に、シリーズの起点となった本作の見どころを紹介したい。
本作の公開当時、話題になったのは原作再現度の高いキャストだった。『週刊少年マガジン』(講談社)誌上で連載され、コミックスの累計発行部数7000万部を超える和久井健の人気漫画『東京卍リベンジャーズ』を実写化した同作には、北村匠海をはじめ、吉沢亮、山田裕貴、今田美桜、杉野遥亮、磯村勇斗、間宮祥太朗、鈴木伸之、眞栄田郷敦、清水尋也らが集結した。一般的にこれだけの豪華キャストが勢ぞろいすると演技よりも出演者に注目が集まりがちだが、本作はそんな下馬評を余裕で覆した。
二次元から三次元への実写化の壁を突破した要因は、スタッフ・キャストの半端ない熱量にある。原作ファンを公言する北村を筆頭に徹底した役作りを行い撮影に臨んだ。暴走族「東京卍會」の総長“無敵のマイキー”佐野万次郎を演じた吉沢は、漫画から抜け出したと絶賛されたビジュアルに加え、光と闇を備えた多面性とリーダーシップを体現した。原作屈指の人気キャラ・ドラケン役の山田は、自身のすべてを賭けてこの役に挑んだと語っている。個々のキャラクターに対する愛は深い作品理解に裏付けられており、原作のテイストを生かしながら、振り切った演出で『映画 賭ケグルイ』や『映像研には手を出すな!』を成功に導いた英勉監督の手腕が光っている。
本編について触れると、本作はタイムリープものに位置づけられる。主人公のタケミチ(北村匠海)は中学時代に付き合っていた橘日向(今田美桜)の死を知る。過去を変えることで未来を変えるタイムリープものの王道を『東京リベンジャーズ』も踏襲している。現実の世界で過去は変えられないが、それを可能にするところがタイムリープのおもしろさだ。しかし、それだけではよくある作風の範疇を出ない。本作が非凡なのは、そこから一歩進んで私たちに呼びかけていることだ。未来を変えるために戦えと。
過去に戻れば、そこには無限の可能性があり、選ばなかった別の道を選ぶことで未来が変わる。そう思うのはちょっと安易だ。考えてみてほしい。もし過去に戻れたとして、そこは現在につながるある時点で、周囲には自分と自分を取り巻く環境がある。そこから未来へつながる道筋は、多少の誤差はあっても基本的に既視感のある風景だろう。そうであるなら、過去に戻った自分がその時々でベストな選択をしても、結果的に同じ現実に行き着くのではないか。未来を変えるのは想像以上に大変なのだ。