『らんまん』が大河ではなく“朝ドラ”として描かれた理由 新たな近現代史を知る面白さも
さて、ここで天狗こと坂本龍馬(ディーン・フジオカ)の言葉を振り返ろう。「己の心と命を燃やして、何か一つ事を為すために生まれてくるがじゃ。誰に命じられたことじゃあない。己自身が決めてここにいるがじゃ」と彼は言った。
「己の心と命を燃やせる」、これが「自分の為すべきこと」であると思える何か。それを、万太郎と綾と竹雄(志尊淳)は見つけた。それぞれに「考えただけでカーッとしてくる」対象であるところの植物、酒造り、綾のことである。それに一直線に向かっていきたいと願う若者たちの前に立ちはだかるのは、タキであり、生まれた時から当然のように「誰かに/社会に」決められていた、それぞれの「務め」だった。
つまりは、当主であること、女であること、峰屋の番頭の息子であること。その抗いがたい運命からどう抗うか。「歪」と言われても、「強欲だ、我がままだ」と自分自身を呪っても、抑えきれない彼らの思いが「自由」への渇望に繋がり、高知の人々の中で巻き起こる自由民権運動のうねりと見事に重なり合う。しかし、彼らが追い求める、この時代における「自由」というものは、ジョン万次郎(宇崎竜童)が万太郎に語るところの「海でみた夢」という言葉や、綾と竹雄が人々に混ざって「よしや節」を踊る最中に空を舞っているシャボン玉といったものがイメージさせるように、儚く、掴みがたいものなのかもしれない。
彼ら彼女らは無事、内側に秘めた「熱い思い」を外側に出し、それぞれの「金色の道」を歩いていけるのか。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、広末涼子、松坂慶子ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK