『すずめの戸締まり』が中国、韓国で記録を更新 アニメの世界興行が別のフェーズへ

『すずめの戸締まり』中国、韓国で記録を更新

 新海誠監督の『すずめの戸締まり』が世界各国で続々と公開されヒットを記録している。日本のアニメが世界で高い評価を得ていることは、もはや驚くことではないが、それにしても本作のヒットの仕方は凄まじい。2022年11月の公開後、日本でも大ヒットとなった『すずめの戸締まり』は、2023年に入って各国で公開され、興行記録を次々と塗り替えている。ここでは『すずめの戸締まり』の各国での反応をチェックしつつ、そのほか日本のアニメ映画が世界でどのように評価されているのか見ていきたい。

すずめの戸締まり
『すずめの戸締まり』©︎2022「すずめの戸締まり」製作委員会

中国・韓国で歴代日本アニメ映画興行成績を更新

 3月8日に公開された韓国では、公開から15日連続動員数1位を獲得。映画振興委員会の統合電算ネットワークによると、4月17日までに累計観客動員数約496万人を記録し、これは2023年に韓国で公開された映画の最高興行成績となった。また韓国で公開された歴代日本映画でも1位を獲得。次々と記録を塗り替えている。

 さらに、いまやハリウッドに匹敵するほどの巨大市場となっている中国でもスマッシュヒットを飛ばし、大きな注目を集めている。3月24日から公開された本作は、4月17日までに興行収入7億5,200万元(約146億円)を達成し、2016年に公開された『君の名は。』の5億7,600万元(約100億円)を上回り、中国で公開された日本のアニメ映画歴代興行収入ランキングで1位になった。4月18日時点では147億円を突破し、日本での興行収入144.8億円を超えた。日本作品の中国での興行収入が日本を上回るのは史上初だ。これについて新海監督は自身のTwitterに「日本のアニメーションの世界興行が別のフェーズに入ったと実感しています」と投稿した。

ベルリン国際映画祭への出品、Rotten Tomatoesでも高評価

 アジア以外のヨーロッパや北米でも、その評価は高い。『すずめの戸締まり』は、2002年に金熊賞を獲得した『千と千尋の神隠し』以来、21年ぶりにベルリン国際映画祭のコンペティション部門に正式出品された。さらに異例なことは、『すずめの戸締まり』は映画祭より前に日本で公開されていることだ。ベルリンをはじめとする大型国際映画祭の主要部門では、通常はまだ一般公開されておらず映画祭が初上映となるワールドプレミアが選考基準となる。しかし『すずめの戸締まり』は、日本ですでに公開されているにもかかわらず、インターナショナルプレミアとして公式出品されたのだ。受賞こそ逃したものの、映画祭側の強い意向があったことが感じられる。

 北米では4月14日から字幕版と吹替版の両方が公開され、ロサンゼルスで吹替版のプレミアが行われるなど、華々しくデビューした。映画批評サイトRotten Tomatoesでは批評家スコアが96%、観客スコアが98%(2023年4月28日時点)と驚異の高スコアを叩き出している。批評家や観客の多くが絶賛しているのは、そのアニメーションの美しさだ。そこに2011年の東日本大震災をからめた成長物語、普遍的な慰めと癒やしを描いたストーリーも好評を博している。

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