『王様に捧ぐ薬指』を通して考える理想の夫婦像 橋本環奈の凛々しい着物姿に惚れ惚れ

『王様に捧ぐ薬指』で考える理想の夫婦像

「一緒に住まないか」

 結婚した2人なのだから同じ部屋で暮らすのは当然のこと。しかし、お互いのメリットを見込んで契約結婚したこの2人にとって、それはずっとスペシャルな響きを持つ。そして無愛想に差し出される左手。「街を歩くときは手をつなげ」と、言い方こそこれまでと変わらないが、その少々照れくささが滲む態度に以前とは違う何かを感じずにはいられない。

 真正面からぶつかって、それぞれが少しずつ歩み寄ることで、お互いへの信頼が増していく。そんな愛情の芽生えとも言える小さな変化は、台本通りに演じられる完璧な夫婦像を見ているときよりも、ドキッとさせられる瞬間でもあった。

 火曜ドラマ『王様に捧ぐ薬指』(TBS系)第2話。綾華(橋本環奈)と東郷(山田涼介)の新婚生活を動画配信するチャンネルは登録者数10万人を突破し、夫婦としてトークショーに参加するなど計画通りに注目を集めることに成功した。

 そんなある日、綾華がカメラの録画ボタンを切り忘れるといううっかりミスのせいで、東郷の親友かつ秘書のハチ(森永悠希)に契約結婚であることがバレてしまう。動揺した東郷は「これじゃただのアホな貧乏女に大金を寄付しただけじゃないか。人選ミスった!」と綾華を罵倒。これには綾華も思うところがあり、東郷にビンタしてしまうのだった。

 なぜなら、綾華が東郷の母・静(松嶋菜々子)との付き合いに奮闘していたから。お茶会に生花、茶道……と、東郷の「妻」という立場から派生する「嫁」というポジションも全うしようとしていた綾華。そう、結婚が恋人時代と明らかに違うのが、こうした家族としての責任が増えること。綾華は「そのぶん追加料金を〜」なんて東郷にちゃっかり対価をせびってはいたが、そのミッションは決して楽な仕事ではない。

 東郷の家族から“ふさわしい人間”として認められること。それは自分自身のためというよりも、東郷との夫婦生活を続ける2人にとって必要不可欠なことだと思ったからこそ。対して、東郷はといえば、自らが経営する結婚式場の業績を向上させること、そして親が敷いたレール通りには結婚しないという個人としてのメリットにばかり目を向けていた。

 これでは「夫婦」というプロジェクトを成功させるのは難しい。しかし、この2人が見ている方向にズレがあること、その不満を真正面からぶつけられたことは、もしかしたら愛情ゼロでスタートした契約結婚だったからかもしれない。

 ごく一般的な恋愛結婚だったとしたら、惚れた弱みで姑に対する我慢を夫に伝えずに飲み込んでいた、なんていう可能性も……。そう思うと、今回見えてきた2人の歩み寄りは、ビジネス夫婦でも一般的に惹かれ合って“普通の”夫婦であっても必要なことのように思えてくる。

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