『THE LAST OF US』クレイグ・メイジン×ニール・ドラックマンが語る裏側 S2はどうなる?
アメリカ現地時間3月7日、『THE LAST OF US』シーズンフィナーレの放送を目前に、同作の脚本・製作総指揮を担当するクレイグ・メイジンとニール・ドラックマンによるオンラインカンファレンスが行われた。世界中の記者たちから多くの質問が集まり、リラックスムードのなか、2人は『THE LAST OF US』の製作における原作ゲームとのつながりや、シーズン2について語った。
質問が集中したのは、やはり最終話でのジョエルの衝撃的な行動について。エリーを救うために彼が下した決断は、原作ゲームでも物議を醸したが、ドラマではそれをそのまま映像化している。「これを変えるつもりはなかったのか?」という質問に、ドラックマンは「ありませんでした」と即答。「少しショットを変えようかという話はしましたが、大きく外れることはありませんでした」。これについてメイジンは「“ゲームと同じ結末にする”と言い張る人がいたんです。僕のことですけど(笑)。ゲームのファンとして、変える必要はまったくないと思っていました」と振り返る。「ゲームではプレイヤーが子どもに対する親の無条件の愛を感じるようになっていて、そこから来る恐れや喜びを描いています。でもそういう状態になると論理的な考えはどこかに行ってしまって、愛する者を守るために恐ろしいことをしでかしたりするものです。ドラマでもそういう場面はいくつもあって、それをどう感動的に美しく描くかを考えました」とドラックマンが語ると、「無条件の愛というのは、文字通り何の制約もないということです。愛する人以外にはまったく興味がなくて、一般的な道徳や倫理観は通用しません。最後の展開については、個人的にも困惑したし迷いました。しかしゲームをベースにしてドラマを制作するにあたって、ニールとノーティードッグが最初に語ったストーリーに矛盾はないとわかっていました」とメイジンも付け足す。
一方でさまざまな可能性を検討する機会はあったようで、ドラックマンは「クレイグが『ほかのエンディングも考えてみたんだけど』と言ってきたことがあって、僕たちはシーズン全体を見返してその方向に進む可能性があるか考えてみました。ですが、大きな変更を入れるたびに『ダメだ、これはうまくいかない。いろいろ変えすぎた』と言ってはもとに戻して、また変えてみてはもとに戻して、ということを何度も繰り返して、結局最初と同じになりました」と語る。しかしその過程で、サムが耳が聞こえないという設定や、ビルとフランクの美しいストーリーも生まれたという。メイジンが「脚本を執筆しているときは安全な時間です。ただのインクですから」と言うと、ドラックマンも「どんなに試行錯誤しても、いちばんお金がかかりません」と同意した。
またドラマで初めて語られたエリーの母・アンナについて話が及ぶと、ドラックマンはエリーのオリジンについてのショートストーリーは、ゲームのプロモーションとして、すでに存在していたと明かした。しかしそれはゲームに盛り込むことができず、映画化の話が出たときにもストーリーに入れることが検討されたというが、映画化自体がなくなり、そのまま忘れていたのだという。「ドラマ化が決定しミーティングをしていたときに、エリーのバックストーリーはどうなっているのかという話になったんです。そこでエリーの母についてのストーリーがあったことを思い出して、彼らに話しました。すると“それは絶対に入れるべきだ”と言われて、どこにどうやって入れれば違和感がないか考えました」。最終話の冒頭にこのエピソードを入れることにした理由には、ジョエルとマーリーンを対比する狙いもあったという。「重要だったのは、マーリーンとアンナの関係です。エンディングに入れることで、マーリーンとジョエルの考え方やアプローチの仕方が真逆であることを示せます。また彼女がアンナと親しかったことを知っていると、死にゆく友人から娘を託されたマーリーンの気持ちや、彼女が払ってきた犠牲の大きさも理解できますし、その死の悲劇性も増します」。
エリーの母・アンナを演じているのは、ゲーム版でエリーを演じたアシュレー・ジョンソンだ。ゲームと彼女のファンだというメイジンは「彼女がドラマに出てくれたことは、もっとも満足した瞬間の1つでした」と語る。「彼女が自分を出産するようなシーンを見て、アシュレーが演じたエリーとベラ(・ラムジー)が演じたエリーのオリジンに遺伝的なつながりを感じたんです」。また、ドラックマンがゲームのキャストと強い信頼関係を築いていることにも触れ、そういった関係があったから今回のジョンソンの出演が実現し、それを誇りに思っているとも語った。
ドラマにも出演しているゲーム版のキャストはジョンソンだけではない。マーリーン役のマール・ダンドリッジは、ゲーム版から同じ役を続投している。また、手術室にいた看護師の1人を演じたのは、ゲーム2作目『The Last of Us Part II』で悪役アビーを演じたローラ・ベイリーだ。彼女のカメオ出演の経緯についてメイジンは「彼女が『ねえ! ドラマに出してよ!』と言ってきたんです(笑)。僕たちは『君のことが大好きだよ、もちろん!』という感じでした」と振り返る。ゲーム版のキャストにとってドラマへの参加は感慨深いものがあったようで、「ローラを病院のセットに案内したとき、彼女は泣いたんです」とメイジンは明かす。「マールも同じように泣きました。ゲームに出演していた人はみんな、その世界が現実に再現されていることに感激したようです」。ちなみにドラックマンも、初めてセットを見たときは泣いたという。さらに彼は、ベイリーは実はゲーム版でも看護師を演じていると明かし、「次のシーズンでもどこかに出てもらおうと思っています」とも語った。