『スタンドUPスタート』人に翼を授ける竜星涼 キーパーソンを演じた栁俊太郎の存在感

『スタンドUPスタート』翼を恵む竜星涼

 自称“人間投資家”の大陽(竜星涼)に人生を狂わされたという男が現れた『スタンドUPスタート』(フジテレビ系)第9話。

 今は「三ツ星エネルギー」で働く八神圭吾(栁俊太郎)は6年前、新卒で入社した会社を1カ月で辞め自信喪失していたところ、たまたま大陽に出会う。人望も厚い八神の素質を見込んだ大陽は彼に起業を勧める。リファラル採用に特化した採用サービスは大陽の見立て通りみるみるうちに業績を伸ばし会社の規模も大きくなる。しかし、第2話で登場したイベント会社社長の東城充(野村周平)同様、その分綻びが出て壊れてしまうのも一瞬だった。顧客の採用情報の流出トラブルで会社は一気にピンチにさらされる。

 「全部お前のせいじゃねぇかよ。分不相応な夢見たのも(中略)俺はお前のおもちゃなんかじゃないんだよ!(中略)俺はお前に価値なんて見出してほしくなかったよ」とは、その時八神が言い放った言葉だ。再会した八神はそれを訂正はしたものの、「お前のやり方は人を不幸にする」と改めて大陽に伝えた。

 確かに大陽と出会うまでは“起業”なんて一度も考えたことなどなかっただろう八神が、彼に焚きつけられ大きな一歩を踏み出し、無理をしてでも自分の実力以上の場所まで遠く飛躍できた。しかしながら軌道に乗っていた時には見て見ぬ振りをできた違和感も、一度うまくいかなくなると、“こんなはずじゃなかった”“自分が求めていたものとは違った……”、そして“そもそも自分は起業なんてしたくなかった”と、今さら言ってみたところで仕方のないことに原因を見出し、責任転嫁しようとする。

 「人それぞれに価値を見出す君と、組織に利益をもたらす人間に価値があると考える大海くん。どちらも価値と無価値で人を選り分けてる(中略)人間なんて生きてりゃそれでいい。勝手に価値を求めるな」とは、叔父で副社長の義知(反町隆史)から放たれた痛烈な一言だが、なんと彼の手はこの八神にまで及んでおり、今回大陽の前に現れたのも義知の差し金だったのだ。

 案の定、大陽も「正直今は誰のスタートアップにも寄り添える自信がない。俺、ずっと間違えてたのかな……」と、自分がこれまでやってきたことに対しても懐疑的になってしまう。

 今話キーパーソンを担った八神役を演じた栁は、『アトムの童』(TBS系)でも、ある意味、ずっと作中に暗い影を落とす重要人物・緒方公哉役を好演した。緒方自身は屈託のない青年ながらも、その屈託のなさや一生懸命なピュアさが招いた結果がまたやるせなさを際立たせていた。『ナンバMG5』(フジテレビ系)ではロン毛のヤンキーに扮しており、どの作品でも気になる存在感を発揮し、余韻をたっぷり残していく。

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