『エブエブ』5位、『フェイブルマンズ』10位 アカデミー賞有力作品興行の悲喜こもごも

アカデミー賞有力作品興行の悲喜こもごも

国内映画興行ランキング

 先週末の動員ランキングは、『映画ドラえもん』シリーズの42作目、『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』がオープニング3日間で動員54万2256人、興収6億6332万5180円をあげて初登場1位となった。日本の映画興行のコロナ禍は、事実上、2020年3月6日公開予定だった『映画ドラえもん のび太の新恐竜』の公開延期発表から始まったと言っていいだろう。結局5ヶ月後の2020年8月に公開された同作、そして当初の予定から丸1年の公開延期を経て2022年3月に公開された次作『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』は、コロナ禍で客足への影響が最も大きかったファミリー向けの作品ということで、その直撃を食らってきた。

 2018年、2019年と興収50億円超を連発していた『映画ドラえもん』シリーズだったが、2020年の『映画ドラえもん のび太の新恐竜』は最終興収33.5億円、2022年の『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』は最終興収26.9億円。今回の『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』の成績には、日本の映画興行がコロナ禍というトンネルを完全に抜けたのかどうかを判断する上でも注目が集まっていたわけだが、オープニング3日間の興収は前作のちょうど1.5倍。コロナ禍以前の興収50億円の基準に比べると勢いは足りないが、ひとまず回復基調にのったことは間違いないだろう。

 さて、先週末は3月12日(現地時間)に授賞式を控えたアカデミー賞の目玉となる作品が2作、公開された。一つは ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート監督作品、アカデミー賞で最多10部門11ノミネートされている『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』だ。オープニング3日間の動員は9万6522人、興収は1億4871万620円で初登場5位。スター監督やスター俳優の作品ではない、作品の中身のユニークさがいかに口コミで広がっていくかが勝負の作品だけに、まずは妥当な滑り出しといったところか。アカデミー賞では作品賞を含め主要賞で最有力視されているので、結果次第ではまだ化ける可能性はあるだろう。

 一方、アカデミー賞で7部門ノミネートされているスティーヴン・スピルバーグ監督の『フェイブルマンズ』のオープニング3日間の動員は4万3523人、興収は5890万8410円で、トップ10内ギリギリの初登場10位となった。SF大作やシリーズ作品は除いて、スピルバーグの監督作が日本で確実に興収10億円以上のヒットを飛ばしていたのは、2004年の『ターミナル』あたりが最後。今回もアカデミー賞の結果を問わず厳しい興行になりそうだが、それにしてもこのスタート成績の低さには途方に暮れずにはいられない。

 『フェイブルマンズ』の「スピルバーグ初の自伝作品」という触れ込みは、ほとんど日本の観客に響かなかったということになる。また、そうした作品に期待されがちな「感動作」的な要素も、実はこの作品には希薄だったりする。しかし、だからと言って見過ごしていいわけではない信じ難いような傑作である、ということだけはここに書き残しておきたい。

■公開情報
『フェイブルマンズ』
全国公開中
監督・脚本:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:トニー・クシュナー
音楽:ジョン・ウィリアムズ
衣装:マーク・ブリッジス
美術:リック・カーター
編集:マイケル・カーン、サラ・ブロシャー
撮影:ヤヌス・カミンスキー
配給:東宝東和
151分/原題:The Fabelmans
©Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.
公式サイト:https://fabelmans-film.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/fabelmans_jp

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