『相棒』が青春ドラマテイストに? 寺田心×幸澤沙良が等身大で表現した10代の葛藤

『相棒』が青春ドラマテイストに?

 10代の心は繊細だ。ちょっとしたことで揺さぶられ、壊れてしまいそうになる。自分だってそんな時期があったはずなのに、良いのか悪いのか、気が付くといつの間にか強くなっている。2月15日放送の『相棒 season21』(テレビ朝日系)の第17話は、1枚の写真をめぐる高校生の葛藤と、その真っ直ぐな思いが頑なになってしまった大人の心を動かしていく様子が細やかに描かれていた。

 イベント会社を経営していた浅野(平井真軌)という男の遺体が死後3日の状態で発見された。浅野は、出資金だけ奪うあくどい商売をしていたようで、恨みによる犯行と思われた。現場を訪れた右京(水谷豊)は、一人の少年がその建物にカメラを向けていることに気付く。彼は、数年前から毎日欠かさず同じ建物の写真をSNSにアップしていた奥山幹太(寺田心)という高校生。右京と亀山(寺脇康文)は幹太から話を聞くが、何かを隠している様子。ふたりが幹太と別れた直後、今度は彼の幼なじみだという深澤杏子(幸澤沙良)に話し掛けられる。彼女もまた何か知っている素振りを見せるが肝心なことは何も話さなかった。幹太が定点写真をアップしていたSNSに、ある時期から急に「いいね」がつくようになったことに注目した右京は、幹太の写真を自分のSNSで紹介したという人気カメラマンの大塚あゆみ(大野いと)のことを調べ始める。あゆみは、幹太と知り合ってからというもの、自分の撮影場を見学させるなど、幹太に目をかけていたという。

 事件発生直後からSNSの更新を止めてしまっていた幹太。その理由は、事件当日の写真に、あゆみの姿が写っていたからだった。殺人事件が起きたであろう時間に、たまたまその現場を撮った写真にあゆみがいる。決定的な瞬間は写っていなくても、「あゆみさんが犯人かもしれない」と考えるのは自然なことだろう。幹太の心は、尊敬し、お世話にもなっているあゆみが殺人をするとは考えたくない気持ちと、この写真を隠すことが事実を隠すことに繋がっているのではないかという罪悪感で大きく揺れ動いていた。

 そしてその心の動きは、幹太のことをよく知っていると自負する杏子にも伝わっていた。でもその様子のおかしさに殺人事件が関わっているとは夢にも思わなかったのだろう。杏子は幹太に「大塚さんのこと、好きなの?」と聞く。杏子の甘酸っぱい恋心が垣間見えた瞬間だった。誰よりも一緒にいたはずなのに、自分の知らないところで、知らない女性に心を動かされている幹太。そしてそれにとても動揺している自分。さまざまな焦りがこの一言に詰まっていた。杏子の言葉の意図には気づかないのに、肩が触れ合うような近い距離で、自分の今の苦しい気持ちを吐き出すように語った幹太のいっぱいいっぱいな姿を含め、何かとすれ違いがちな10代の男女の青春がそこにあった。難しい心の機微を寺田心と幸澤沙良が見事に表現していた。

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