『探偵ロマンス』太郎が“他者との交わり”の答えを出す 推理の余白を残した衝撃的なラスト
そんな住良木を太郎は「誰かに求められていないと生きてると実感できない」「空っぽの寂しい人」だと軽蔑する。住良木も三郎に自分の物語を分かってもらいたかったのかもしれない。だが、先の見えない闇の中をもがき、生きている初之助の物語を住良木は分かろうともせず、駒のように扱った。初之助も、村山隆子(石橋静河)も、太郎の物語を楽しみにしていると言ってくれた。太郎が出した答えは、たった一人にしかない物語を守るため、困っている人がいたら手を差し伸べる。一方的に相手を決めつけ、他者と分かりあおうとすらしなかった太郎が白井三郎という名探偵と出会い、生まれた物語の一つの結末だ。
そして、ラストに太郎と三郎の前に現れたのが男装の麗人(市川実日子)。指には緑色に光る八角形の指輪「イルベガンの卵」がはめられている。太郎の小説に登場する「名探偵・明智小五郎」の名前を知っている人物。住良木がお勢(宮田圭子)に化けていたように、今回もまた彼が変装している可能性もあるが、全くの別人ということもあり得るだろう。『探偵ロマンス』が視聴者に残した推理ポイントであり、物語に用意された大きな余白だ。分からない、だから知りたい。
■放送情報
土曜ドラマ『探偵ロマンス』
NHK総合にて、2月15日(水)1:15〜再放送
NHKプラスにて配信中
出演:濱田岳、石橋静河、泉澤祐希、森本慎太郎、世古口凌、本上まなみ、浅香航大、松本若菜、近藤芳正、大友康平、岸部一徳、尾上菊之助、草刈正雄ほか
脚本:坪田文
音楽・主題歌:大橋トリオ
制作統括:櫻井賢
プロデューサー:葛西勇也
演出:安達もじり、大嶋慧介
撮影場所:京都東映撮影所、関西近郊ロケほか
写真提供=NHK