『鬼滅の刃』の魅力が最大限に発揮されたワールドツアー上映 映画館にしかない“陽と陰”
映画館の魅力とは何か。『ワールドツアー上映「鬼滅の刃」上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』はそれを再確認するのに適した作品だった。
本上映形態は、すでに放送・配信ずみの『鬼滅の刃』の「遊郭編」最終二話である第十話と第十一話に新章「刀鍛冶の里編」の第一話を合わせたもの。内容の半分はすでに多くの人が自宅やスマートフォンで視聴済みの内容ということになる。
どれだけヒットするのか、事前に予測しづらい特殊な上映形態だったと言えるが、蓋を開けてみれば初日3日間で11億円を超える大ヒットスタートとなった。これは、多くの人々が、一度観た映像を、映画館で観直すという体験をしたことを意味するわけだ。
かつての名作がリバイバル上映されたものを観に行く熱心な映画ファンはこれまでにもいたし、アニメの総集編上映に足を運ぶ観客も少なくはなかった。しかし、これだけの規模で、すでに鑑賞済みの作品をもう一度映画館で観る体験を促した作品はあまりなかったのではないだろうか。
こういう鑑賞体験こそ、映画館の魅力を再発見できる。とりわけ「遊郭編」の最終二話は、映画館の特徴によってそれぞれ大きな魅力を発揮できるエピソードだった。
映画館の「陽」と「陰」の特徴
映画館には「陽」と「陰」の特徴がある。
「陽」の特徴は、多くの人に認識されているものだ。「大画面」と「豪華な音響」である。
2022年は、この「陽」の特徴によって輝く作品が、話題を集めた(いつだって話題を集めるのは「陽」のタイプの作品だけど)。
『トップガン マーヴェリック』の空中戦は広いスクリーンでこそ、その魅力が最大化される。スマートフォンの画面であの爽快感とスリルはどこまで感じられるだろうか。そして、戦闘機が空を切り裂く轟音も映画館だからこそ、全身に響く。
インド映画『RRR』も同様に「陽」の特徴で魅力が高まる作品だった。数々の迫力あるアクションシーンもそうだが、ナートゥダンスなどの音楽もやはり豪華な音響設備で聞いてこそ興奮が最大化される。
「遊郭編」の第十話は、こちらの特徴によって魅力が高まるエピソードだった。
上弦の陸の鬼、妓夫太郎と堕姫との戦いに決着がつくこのエピソードは、「遊郭編」の中でも最高レベルのアクションシーンが展開される。炭治郎と妓夫太郎を相まみえて、宇髄天元が助けに入るところからの一連のアクションシークエンスは、映画館の大画面で観ても全く色褪せないどころか、その魅力が最大限に感じられるはず。むしろ、その演出の隅々まで堪能するには、映画館で観た方がいい。
豪華な音響によっても、そのアクションの迫力は高められており、爆発音から声優たちの絶叫に至るまで、自宅での視聴とは段違いの響き具合だ。映画館で観ると、炭治郎たちの叫びが腹にまで響いてくるのだ。どれだけあの戦いが激闘だったのか、自宅で視聴した時と実感がまるで異なる。