『家庭教師のトラコ』はまさに“橋本愛劇場” 心揺さぶる問題提起と普遍的なメッセージ

『家庭教師のトラコ』はまさに“橋本愛劇場”

 筆者には、忘れられないシーンが2つある。それは第8話でトラコが福多に怒りをぶつける場面。幼い頃に2人が育った児童養護施設で、里親に引き取られていくはずだったトラコの幸せを福多は奪っていた。この世界で唯一の味方だと信頼していたはずの福多から裏切られた失望。怒りをぶちまけていたトラコが「まぁ、いっか」と急に我に返り、説得する福多に「あんたが何言っても、何にも聞こえないんだよね」と告げる彼女の表情には深い悲しみと孤独が滲んでいた。

 そしてもう一つが、第9話でトラコが真希、智代、里美の“3人の母親”の腕に抱かれ、咽び泣くシーン。7才の時に生き別れた母・香苗と再会するチャンスを掴むものの、トラコは一歩遅く、母親の死に目に会うことはできなかった。母が最後に何を伝えたかったのかも知ることはできず、自分を偽って生きてきたトラコの堰き止めていた思いが大粒の涙とともに一気に流れ出す。それはありのままの自分で生きていくと決めたトラコが初めて自身をさらけ出した瞬間だった。子供のように母を呼ぶトラコを、真希、智代、里美の慈愛が包み込む。

 トラコの怒りにも通ずる劇中の決めフレーズ「私には嫌いな言葉が3つある」は、最終回には「好きな言葉」へと反転していった。自分を見失わないで逆境を乗り越えていく知恵から学んだ「覚悟」、自分の進学よりも初めてできた友達を大切にする高志の人を信じる「勇気」、人を笑顔にする人生を歩む決断をした守の持つたくさんの「愛」。独りで生きてきたトラコは彼らとの出会いによってもう一度生まれ変わることができた。心の持ちようで人は何度だってやり直すことができるのだ。

 『家庭教師のトラコ』は心を激しく揺さぶる問題提起をコンセプトにしながら、「幸せとは何か」といった、いつの時代にも人が追い求めている普遍的なメッセージを教えてくれている。

参照

※ https://youtu.be/qc0V27dcBvM

■リリース情報
『家庭教師のトラコ』
2月8日(水)発売
<Blu-ray BOX>
価格:29,040 円(税込)
<DVD-BOX>
価格:22,990 円(税込)

【封入特典】
・オリジナルブックレット

【映像特典】
・スペシャルメイキングほか

出演:橋本愛、中村蒼、美村里江、細田佳央太、板谷由夏、鈴木保奈美
チーフプロデューサー:田中宏史、石尾純
プロデューサー:大平太、田上リサ
脚本:遊川和彦
音楽:平井真美子
演出:伊藤彰記、岩本仁志
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
発売・販売元:バップ
©NTV
商品ページ:https://www.vap.co.jp/torako/

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