近鉄バファローズ、なぜ今ドラマに登場? 『舞いあがれ!』では“変わらぬ愛”の象徴に

近鉄バファローズ、なぜ今ドラマに登場?

 2022年末、なぜかドラマの世界で近鉄バファローズ(正式名称は大阪近鉄バファローズ)が熱かった。日曜劇場『アトムの童』(TBS系)と朝ドラ『舞いあがれ!』(NHK総合)、2つのドラマに近鉄バファローズが登場したのだ。

 あらためて説明しておくと、近鉄バファローズとは大阪を本拠地にしていたプロ野球チーム。「いてまえ打線」の愛称通り、豪快な個性派集団として知られた。日本中の注目を集めた1988年の「10.19決戦」や代打逆転サヨナラ満塁本塁打が飛び出した2001年の優勝決定試合など印象的な試合も多い。メジャーリーグで活躍した野茂英雄も近鉄出身だ。

 豪快なイメージの一方、12球団で唯一日本一に届かなったことや2004年に親会社の経営難から球団が消滅したことなどから、どこかもの哀しさを漂わせる球団でもある。なお、2022年の秋は合併先のオリックスバファローズが日本一となり、しみじみ感慨に浸った近鉄ファンも少なからずいたと思う。

 『アトムの童』では、アトム玩具の造形師・各務英次(塚地武雅)がトレードマークにしているキャップが近鉄のものだった。ドラマの舞台は東京、現代の物語でもあるので「なぜ?」と思った視聴者もいたようだが、各務を演じた塚地が自ら各務のバックボーンについてTwitterで次のように説明している。「近鉄ファン、昭和愛、色合い、何より尊敬する岡本太郎さんがロゴデザインということでお気に入り」(2022年10月31日)。

 近鉄のキャップの中心にデザインされている球団マークをデザインしたのが、芸術家の岡本太郎である。これは1959年に「猛牛」の異名を持つ千葉茂が監督に就任してチーム名を「パールス」から「バファロー」(当初は複数形ではなかった)に変更した際、千葉が友人の岡本にデザインを依頼して作成してもらったもの。猛牛をかたどった洗練されたデザインは「ツノマーク」と呼ばれ、ファンから長きにわたって愛された。赤と白と紺色のトリコロールカラーが鮮やかな「三色帽」とも呼ばれるキャップは1978年に採用。1974年に登場したラグランスリーブのユニフォームとともに、近鉄を象徴するデザインとなった。

 各務が岡本太郎に心酔しているのは、登場シーンで岡本がデザインした「太陽の塔」のレプリカを手にしていたことからも明らか。「ツノマーク」が優れたデザインであると同時にアートでもあったように、各務もアトム玩具が手がけるオモチャは単なる大量生産の商品ではなく、芸術性を併せ持つものだという誇りを持っていたのだろう。

 昭和を愛し、近鉄を愛し、岡本太郎を敬愛し続ける各務は、遊びがコンピュータゲームに変わっても、これまで培ってきた遊びのスピリッツを注入できる男として描かれている。

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