『大奥』愛のために強くなる家光と弱くなる有功 斉藤由貴が春日局の奥行きを表現

『大奥』斉藤由貴が春日局の奥行きを表現

 しかし、春日局には春日局の使命がある。明智光秀に仕えた斎藤利三の娘として、春日局はいつ殺されるやも分からぬ日々を長らく過ごした。延々と続くかのように思われた恐怖を終わらせてくれた徳川家康に、春日局は床の中で手を合わせ、涙を流す。もう二度と戦乱を招かぬよう、徳川の権威を示し続けようとした春日局をどうしても憎み切ることはできない。それは有功も同じだった。だからこそ、春日局の看病を請け負った。

 春日局は有功に「あの日、わしは仏をさらってきたのじゃ」と語りかける。たくさんの間違いを犯したかもしれないが、有功を無理やり還俗させ、大奥に招いたことだけは間違いではなかったと。なぜなら、有功は実の子のように育ててきた千恵の心を救い上げてくれた人であるからだ。

 彼女の実の子である正勝(眞島秀和)が言うように、春日局は千恵の母といえる存在だった。死の間際、「どうか世が滅びるその日まで上様と共にいて下され」と有功に懇願する春日局。愛する存在である子どもたち(=千恵と正勝)に対し、鬼にならざるを得なかった春日局が最期に見せた仏の顔に涙が溢れる。こんなに人の心を揺さぶる、鬼にも仏にもなる存在を体現できるのは斉藤由貴以外にいなかったであろう。原作で描かれる人物像にさらなる奥行きを持たせながら春日局を演じ、「守るべき者のために強くなる」というこの編で描かれるテーマをより強固なものにした。

 春日局の意志を継ぎ、国を守るために将軍という人柱になることを決意した千恵。その人生もやがて終わりを告げ、次週からは娘、5代将軍・徳川綱吉(仲里依紗)の時代が始まる。

■放送情報
ドラマ10『大奥』
NHK総合にて、毎週火曜22:00~22:45放送
出演:福士蒼汰、堀田真由、斉藤由貴、仲里依紗、山本耕史、竜雷太、中島裕翔、冨永愛、風間俊介、貫地谷しほり、片岡愛之助ほか
原作:よしながふみ『大奥』
脚本:森下佳子
制作統括:藤並英樹
主題歌:幾田りら
音楽:KOHTA YAMAMOTO
プロデューサー:舩田遼介、松田恭典
演出:大原拓、田島彰洋、川野秀昭
写真提供=NHK
©よしながふみ/白泉社

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