『大奥』はNHKならではの大スケールに? 『おんな城主 直虎』森下佳子の構成力に期待
“男女逆転の大奥”を描いたよしながふみの漫画『大奥』(白泉社)がドラマ化され、NHK総合にて2023年1月よりドラマ放送されることが発表された。
『大奥』は、漫画雑誌 『MELODY』(白泉社)にて2004年8月号から2021年2月号まで連載されていた。若い男子のみが感染する謎の疫病により、男子の人口が急速に減少した江戸時代が舞台。男女の立場は逆転、江戸城でも3代将軍・家光以降、将軍職は女子へと引き継がれ、美男三千人と称される男の世界へと変わった大奥が描かれる。ジェンダー、権力、病など、現代社会が直面する課題を大胆な世界観で鮮やかに描いたことにより、これまで数々の賞を受賞してきた。
原作の魅力を、ライターの木俣冬氏は以下のように語る。
「男女の立場が逆転した、いわゆる架空世界が舞台となっていますが、疫病という理由づけにより、『実際にこういうことが起きるかもしれない』という説得力がある設定の物語となっています。現在はジェンダーの問題が至るところで叫ばれていますが、早い時期からそうした問題に眼差しを向けたこと。しかも、江戸時代の大奥という女の世界をひっくり返した大胆な発想を、よしながさんの手腕によってロジカルに展開されている点が素晴らしいと思います」
そんな『大奥』はこれまで、2010年に二宮和也主演、柴咲コウら出演の映画『大奥』、2012年には堺雅人主演、多部未華子ら出演のテレビドラマ『大奥~誕生[有功・家光篇]』(TBS系)、同年に堺雅人主演、菅野美穂ら出演の映画『大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉編]』と3度映像化されてきた。いずれも豪華キャストが勢揃いし、公開・放送当時は大きな話題となった。木俣氏は一連の作品をどう観ていたのか。
「TBSの日曜劇場では企業戦士(男性たち)の覇権争いがこれまで多く描かれていますが、『大奥』は女性が中心で政(まつりごと)を行うところが魅力的に感じました。たくさんの魅力的な男性たちに囲まれた、自立した女性たちという構造が痛快で。また着物も華やかで、豪華絢爛な世界観も昨今では珍しく、とても楽しめた印象があります」
過去3作は各時代ごとの映像化だったが、3代将軍・家光編から原作のラスト・大政奉還までの物語を映像化するのは今回が初めて。脚本を『JIN-仁-』(TBS系)、『ごちそうさん』(NHK総合)、『おんな城主 直虎』(NHK総合)などを手掛けてきた森下佳子が担当することも大きな話題となっている。
「何クールで放送されるのかは分かりませんが、一気に最初から最後までドラマ化するということは、今まで以上に骨太なテーマ性をもってよしながさんの世界観をしっかりと見せるドラマになるのではないでしょうか。オリジナルはもちろん、原作ものを手がけるとその鮮やかな構成力が光る森下さんが脚本を手がける点にも安心感があります。森下さんは本質を守りながら驚きの発想で構成を変え、オリジナル部分を加えても嫌な感じにはならず、逆に原作を引き立てる力を持った方。1クールのみの放送となっても、原作の良いところを上手く抽出してくださるのではないかと思います」