『ガンニバル』静かな威圧感を放つ田中俊介が恐ろしい 終盤に向けて物語が一気に加速
大悟(柳楽優弥)を山奥の廃ホテルに呼び出した男・寺山京介(高杉真宙)の登場によって、終盤に向けて一気に物語が動きだそうとしているディズニープラス「スター」オリジナルドラマシリーズ『ガンニバル』。1月18日に配信がスタートした第5話では、前回のエピソードにつづいて“後藤家”に支配された村人たちの悪しき部分が露呈していく。これは後藤家という深い闇に迫ろうとする大悟にとってみれば、ある意味“外堀から埋めていく”作業といったところだろうか。いずれにせよ、そこに今回新たに現れる3人の登場人物たちの存在もまた、京介と同様キーパーソンとなりそうだ。
18年前の祭りの夜に、村人の誰かに顔を喰われたと明かす京介(ちなみにこの時点ではまだ彼の名前は明らかにされていないはずだ)。供花村では“喰うためにわざと戸籍のない子どもを作るのではないか”との仮説を大悟に投げかける。その頃、村では祭りの準備のまっただなか。会合を抜け出し、京介に指示されたラブホテルへと向かった大悟は、そこで狩野(矢柴俊博)に協力していた宇多田という男に会う。狩野と共に村のどこかにいるであろう、祭りの日に喰われる子どもたちを探していたという宇多田。大悟は彼から、供花村では不自然なほどに死産が多いという話を耳にするのだ。
狩野が失踪直前に衛星電話で通話していた相手が誰なのか。そのミステリーを軸にして描写されている前回と今回のエピソード。京介と宇多田、2人の有力な人物に会う大悟だが、そのどちらも探している“最後の電話”の相手ではない。とはいえ祭りの日に喰われるそのターゲットが“子ども”であるという手掛かりを得た大悟。狩野が殺されたのは、その子どもたちを見つけ出したからなのか、また村人のなかに内通者がいるのかという、新たなミステリーがそこに生まれるのである。
大悟が何かを追っていると勘付いたのか、やたらと詮索を繰り返し、時には攻撃的なそぶりをも見せる村人たち。その閉鎖的な均衡を破りそうな人物が、村人のなかから2人現れる。1人目は祭りが行われる来乃神神社の息子で、次の宮司となる神山宗近(田中俊介)という男。大悟にそっと「この村を去ったほうがいい」と助言し、終盤には大悟の問いかけに対し、村人たちが後藤家を恐れる理由を教える。他の村人たちは“よそ者”を村の習俗に従わせようとし、従わない者を排除するタイプとみえるが、この宗近は“よそ者”を“よそ者”のまま扱い一線を引こうとするタイプの排他主義者だろうか。静かな威圧感を放つこの宗近のような男が、もしかしたら一番怖いのかもしれない。
そしてもう1人は、さぶ(中村梅雀)の娘で、会合の席でましろ(志水心音)に抱きついた加奈子(山下リオ)。1話で不穏な雰囲気を醸し出していた加奈子だが、3年前に子どもを産んだ彼女は、助産師である後藤銀(倍賞美津子)に死産であると告げられ子どもを連れ去られたと訴える。後藤家の暗部、すなわち“人を喰う”という噂と“あの人”の存在にたどり着くための貴重な糸口となるであろう加奈子。ラストに家を抜け出して駐在所を訪ねてくる彼女は、大悟に何を証言するのか。
■配信情報
『ガンニバル』
ディズニープラス「スター」にて独占配信中
出演:柳楽優弥、笠松将、吉岡里帆、高杉真宙、北香那、杉田雷麟、志水心音、中村祐太郎、吉原光夫、六角精児、酒向芳、中村梅雀、倍賞美津子
原作:『ガンニバル』二宮正明(日本文芸社刊)
監督:片山慎三、川井隼人
脚本:大江崇允
プロデューサー:山本晃久、岩倉達哉
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