“村社会”における根深い因襲 『ガンニバル』で描かれる長閑さと狂気のコントラスト

『ガンニバル』で描かれる長閑さと狂気

 是枝裕和監督の『誰も知らない』でカンヌ国際映画祭の最優秀男優賞を史上最年少受賞した柳楽優弥に、ポン・ジュノ監督の助監督としてキャリアを積んだ片山慎三監督。そして脚本には『ドライブ・マイ・カー』で濱口竜介監督と共にアカデミー賞脚色賞にノミネートされた大江崇允。この座組みを見ただけで、ディズニープラス「スター」オリジナルシリーズ『ガンニバル』がこれまでの日本のドラマとは一線を画すものであることがよくわかる。

 2018年から2021年にかけて連載された二宮正明の同名コミックを原作とした本作は、ある事件をきっかけに都会から遠く離れた供花村に駐在として左遷されてきた警察官の阿川大悟(柳楽優弥)を主人公にしたヴィレッジサイコスリラーだ。12月28日に独占配信がスタートした第1話と第2話は、この不穏な世界観へと視聴者を引きずり込む物語の導入部分が描かれる。概ねその筋書きは、原作の単行本第1巻で描かれた内容にかなり忠実になぞられていた印象だ。

 妻の有希(吉岡里帆)と娘のましろ(志水心音)と共に供花村に引越してきた大悟は、村人たちから温かな歓迎を受ける。そんな矢先、森のなかでクマに襲われた老婆の死体が発見され、大悟は村を支配する“後藤家”の人間たちと関わりを持つようになる。前任の駐在・狩野(矢柴俊博)がギャンブル漬けで失踪してしまったという噂にも不信感を抱き、真相を探ろうとする大悟だったが、ある時彼は「村の人間たちが人を喰う」という、にわかには信じられない話を耳にすることになる。

 狩野が目撃する異様な光景を長回しで見せることで、一気に視聴者を供花村へと引き込む第1話の冒頭シーン。車を運転しながら村へと入っていく大悟たち家族の姿から俯瞰ショットへ切り替わるようにして、供花村の全景が映し出される。ぐるりと川に囲まれ、周囲から完全に隔絶されたロケーション。そして大悟たちを出迎えてくれる、人情味あふれる村人たちの姿から、村の名産であるヒノキから取れるヒノキ油がかつては死体に振るいかけられ防腐剤の役割を果たしていたという話。“村”という特異な環境を舞台に繰り広げられる、長閑さと狂気のコントラストへの下準備がテンポ良く重ねられていく。

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