『クロサギ』平野紫耀の身体能力はアクションでこそ活きる　黒島結菜との少々ビターな結末

　氷柱（黒島結菜）が黒崎（平野紫耀）の目の前で何者かに拉致されてしまうという前回のクライマックスは、開始後すぐに片付けられる。バイクであっという間に追いついた黒崎が、スタンガンを片手に華麗な飛び蹴りを決めて氷柱を助け出す。考えてみれば、ここまでのエピソードでここまではっきりとしたアクションシーンがなかっただけに新鮮である。平野紫耀の身体能力は、やはりアクションでこそ活きる。

　そんなことを思いながら始まった12月23日放送の『クロサギ』（TBS系）最終話は、黒崎と宝条（佐々木蔵之介）との最終決戦が描かれる。宝条が仕向けた殺し屋に命を狙われ、窮地に追い込まれた黒崎と氷柱を助けに現れる白石（山本耕史）。一方で、蒲生（秋山菜津子）の新党結成に向けた資金集めのため海外ファンドに頼る宝条は、その会社が黒崎の仕込んだものだとは知らないまま、要求されるままにひまわり銀行が保有する国債30億円分に手を付けようとする。そしてその頃、神志名（井之脇海）と桃山（宇野祥平）は黒崎を保護するため、以前黒崎が騙した宇佐美（津田健次郎）に被害届を出させ、逮捕状の請求を急ぐのである。

　黒崎が宝条を喰う。このドラマ後半に用意されたこのフィナーレに向かっていくことが半ば約束された状態で進められるこの最終回は、桂木（三浦友和）が“どちら側”につくのかということが物語を左右させる。前回の宣戦布告とも取れる訣別から、黒崎は桂木と宝条が手を組み自分の命を狙っていると考えるのだが、実際は早瀬（中村ゆり）を使ってその命を守ろうとしていたことが後々わかる（だとすると、なぜ早瀬は日下の転落の現場にいたのかが釈然としないままではあるが）。黒崎と桂木の、ある種の疑似的な親子関係は、決して一方通行ではなかったわけだ。

　その甲斐もあってか二重の罠を仕掛けることに成功し、宝条との直接対決で無事に勝利を収める黒崎。「いただきます」の一言は、「ごちそうさま」の決め台詞を使っていたこれまでと正反対の意味を持つものだと証明させる。しかし路上で突然サンタの格好をした浦川（細田善彦）に刺されてしまうわけだが、そこから先の終盤の展開はかなり急ぎ足で進んでいく。最後の足掻きを見せる宝条に指示されて動いた鷹宮（時任勇気）に、再び食ってかかる氷柱。そこに仲立ちする白石。病院に駆けつける神志名に、すべての証拠を渡す役割も白石が担い、主要な登場人物たちが一気に同じ方向を向いて動き出すというのは大団円にふさわしい。

　見舞いにやってきた桂木に話しかけられるのを、眠ったように聞いている黒崎。桂木が病室を出てすぐに目を開けるあたり、実はすでに起きていた、ちょっとした“騙し”だったのであろう。黒崎が海外へと渡り、その6年後のシーンで検事となった氷柱とすれ違うラストシーンは、携帯電話での通話と互いに異なるタイミングで振り返るあたり、完全に『バタフライ・エフェクト』のオマージュではないか。それはつまり、結局ふたりは異なる世界を生きるしかないという少々ビターな結末とも捉えられる。

■配信情報
金曜ドラマ『クロサギ』
Paraviにて配信中
出演：平野紫耀（King & Prince）、黒島結菜、井之脇海、中村ゆり、宇野祥平、時任勇気、山本耕史、佐々木蔵之介、船越英一郎（特別出演）、三浦友和
原作：黒丸、夏原武（原案）『クロサギ』シリーズ（小学館刊）
脚本：篠﨑絵里子
プロデューサー：武田梓、那須田淳
演出：田中健太、石井康晴、平野俊一
製作著作：TBS
©︎TBS
公式サイト：https://www.tbs.co.jp/kurosagi_tbs/