柳楽優弥の静かな“狂気”が滲む 疑心暗鬼の壮絶ヴィレッジスリラー『ガンニバル』

柳楽優弥の“狂気”が滲む『ガンニバル』

 リモートワークが当たり前となり、税も物価も上がる一方になったいま、一定数の若者は満員電車に心をすり減らしてまで都内での生活にしがみつこうと思わなくなってきた。その表れとして近年、地方移住者が増えてきている。少し前から古民家をリノベーションする人たちの特集もよく見かけるようになって、今や田舎へ暮らしを移すことは一種のブームである。

 これから田舎や村でのスローライフを始めようとする人もいることだろう。そんな方の関心を惹くこと間違いなし、サイコスリラー好きにはたまらないのが、ディズニープラス「スター」で12月28日より独占配信されるドラマ『ガンニバル』だ。

 本作は2018年の連載開始以来、累計発行部数210万部を超える二宮正明が放つ衝撃のサスペンスコミック『ガンニバル』を実写ドラマ化したもの。主人公である警察官の阿川大悟(柳楽優弥)は、ある事件を起こして都会から遠く離れた山間にある「供花村(くげむら)」の駐在として左遷され、犯罪とは無縁そうな穏やかなこの土地で家族と静かに暮らしていた。しかし、一人の老婆の奇妙な死をきっかけに、彼は少しずつ村の異常性に気付いて行く。そして、“この村では人が喰われているらしい”という、衝撃の噂を耳にするのであった。

  センセーショナルなテーマ性から、映像化は極めて困難と見なされてきた。しかし、ディズニープラス「スター」が真っ向からこの原作に向き合い、全世界に発信する実写ドラマシリーズ超大作としてのプロジェクトを始動させた気概を何よりもまず本作から強く感じる。「よく、このドラマを映像化しようとしてくれた!」と拍手を送りたいのは、『岬の兄妹』で長編監督デビューを果たし、あのポン・ジュノ監督にも才能が認められた片山慎三監督をはじめとする気鋭の制作陣。彼はセンシティブな題材を扱うのがうまい印象で、本作における「村社会での生活」を良い塩梅で描き出している。そして脚本には『ドライブ・マイ・カー』でオスカーを受賞した大江崇允、プロデューサーには『闇金ウシジマくん』シリーズを手がけた岩倉達哉、『ドライブ・マイ・カー』の山本晃久と、力強い顔ぶれだ。特に岩倉は、これまでの功績を考えると「“やばい”漫画作品の映像化」に今後も欠かせない存在になっていくだろう。

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