『かがみの孤城』“伏線回収”で片付けたくない怒涛のラスト 積み重ねた人生の先にあるもの
“劇薬”と言ったのもまさにこの点で、こころと近い経験をしたことがある方にとってはトラウマが蘇ってしまうのでないかと心配になりました。もちろん、そんなショッキングな場面を見世物的に扱っているわけではまったくなく、こころの成長や仲間たちとの絆へとつなげる要素となり、観終わったときにはこの描写も必要だったことはよく分かると思います。
7人の子供たちが集められた「かがみの孤城」とは何なのか、7人の子供たちにはどんな関係があるのか、狼の仮面をかぶった「かがみの孤城」の支配人の少女は何者なのか……本作にはさまざな謎が序盤に提示され、ひとつずつそれが明らかになっていき、終盤はいわゆる怒涛の伏線回収が行われます。ただ、一連の伏線回収も決して観客を驚かすためや唸らせるために配置されたものではありません。映画を通して彼らの物語を共有したからこそ、“必然”としてなぜそれが必要だったのかが分かる構成になっているのです。感情移入して観ている人ほど、怒涛のラストには涙腺がやられっぱなしになること間違いなしです。
本作はどんな状況にあっても、自分自身が積み重ねてきた人生の中にいろんな選択肢があることを教えてくれます。今の自分に悩む人や、かつて悩みぬいた経験を持つ方にはぜひ観てほしい一作です。
■公開情報
『かがみの孤城』
全国公開中
声の出演:當真あみ、北村匠海、吉柳咲良、板垣李光人、横溝菜帆、高山みなみ、梶裕貴、矢島晶子、美山加恋、池端杏慈、吉村文香、藤森慎吾、滝沢カレン、麻生久美子、芦田愛菜、宮﨑あおい
監督:原恵一
脚本:丸尾みほ
キャラクターデザイン・総作画監督:佐々木啓悟
ビジュアルコンセプト・孤城デザイン:イリヤ・クブシノブ
音楽:富貴晴美
主題歌:優里「メリーゴーランド」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
企画・製作幹事:松竹、日本テレビ放送網
原作:辻村深月『かがみの孤城』(ポプラ社)
制作:A-1 Pictures
配給:松竹
©︎2022「かがみの孤城」製作委員会
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/kagaminokojo/