『祈りのカルテ』初期研修を終えた玉森裕太が選んだ道 それぞれの“心残り”を描いた最終回

『祈りのカルテ』玉森裕太が選んだ道

 良太(玉森裕太)の最後の研修先は「緩和ケア科」。他の科のように積極的な治療を行わず、あくまでも患者の苦痛を取り除くことを目的としたこの科で良太は、胸膜中皮腫を患い余命幾許もない広瀬(原田泰造)の主治医となる。12月17日に放送された『祈りのカルテ 研修医の謎解き診察記録』(日本テレビ系)は最終回。初期研修を終える良太がどの科に進むことを選ぶのか、広瀬が実の父であることをどのように受け止め、そしてその死をどのような心持ちで看取るのか。

 これまでのエピソードから予想されるこの3つの点に加え、良太はもうひとつの“謎”と向き合うことになる。良太の元を訪ねてくる、桜井(山崎一)という警視庁の刑事。24年前に広瀬は警備員として働いていたビルの会社から金を盗み、警察官に暴行をはたらき逮捕されたという。桜井は窃盗に関しては冤罪の可能性が高いと考えており、定年を迎える前にはっきりさせたいと良太に協力を依頼するのである。そしてその刑事の口から良太に、「諏訪野先生、広瀬さんの息子さんですよね?」という思いも寄らぬ告知がなされる。

 安らかに死を迎えることを待つ「緩和ケア科」を舞台にした今回のエピソードでは、“心残り”が大きなテーマとして横たわる。良太からやりたいことや行きたい場所を聞かれても「もう心残りなんてないよ」と言う広瀬。親子であると知った上で、何をすればいいのかわからずに困惑する良太は、広瀬を散歩に誘う。そこで広瀬は、桜が見たかったと呟き、良太の同期を見たいとお願いする。どんなに些細なことでも、どんなに充実した時間を過ごしてきたり、どんなに諦めていたりしても、一切の心残りなく死ぬことなんて不可能なのだろう。

 良太に広瀬の24年前の事件のことを持ちかける刑事もまた、この事件のことを心残りにしている。広瀬の病室で一升瓶に入った水を飲み交わす冴木(椎名桔平)と立石(松雪泰子)。友人を失い、残された者たちにもまた心残りがある。その一方で、良太たち研修医は同期と離れ離れになることを名残惜しく思いながら、5年後の夢を語り合う。心残りがある別れもあれば、さまざまな可能性に希望を抱ける別れもある。そして広瀬の過去を知るうちに、良太が子どもの頃から気になっていた“壊れたおもちゃ”の謎が解ける。これもきっと、わからずじまいならば心残りになっていたはずだ。

 広瀬から最後に渡された紙に書かれた“良太先生に向いている科”が書かれた紙。良太は広瀬の死後、自分で進路を決めてから初めてそれを開く。「循環器内科」。第5話で、女優の愛原絵理(成海璃子)を担当し、彼女の死に直面することで医師としての大きなターニングポイントを迎えた科だ。中盤で「あの科で経験したことは一生忘れない」と良太が言うのも、循環器内科のことだろう。原作者の知念実希人の他の作品には、循環器内科の医師となった諏訪野良太が登場する。いずれそれらが映像化される時には、また玉森に演じてもらいたいものだ。

■配信情報
土曜ドラマ『祈りのカルテ 研修医の謎解き診察記録』
Huluにて配信中
出演:玉森裕太、池田エライザ、矢本悠馬、濱津隆之、堀未央奈、YU、松雪泰子、椎名桔平、原田泰造
原作:知念実希人『祈りのカルテ』シリーズ(角川文庫/KADOKAWA)
脚本:根本ノンジ
演出:狩山俊輔、池田千尋
チーフプロデューサー:田中宏史
プロデューサー:藤森真実、戸倉亮爾(AX-ON)
音楽:サキタハヂメ
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/inorinokarte/
公式Twitter:@inorinokartentv
公式Instagram:@inorinokartentv

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