『祈りのカルテ』を支える「親子関係」と「同期」 玉森裕太にのしかかる2つの大きな試練

『祈りのカルテ』を支える2つのキーワード

 1週の休止を経て放送された『祈りのカルテ 研修医の謎解き診察記録』(日本テレビ系)の第9話。唐揚げ(前回裕也がみどりを励ますために大量にこしらえた栄養満点にんにくマシマシ唐揚げであろう)を持って広瀬(原田泰造)のアパートを訪れた良太(玉森裕太)は、喀血して倒れている広瀬を見つける。純正医大病院に運ばれた広瀬は目を覚まし、良太と冴木(椎名桔平)に本当の病名を告白する。悪性胸膜中皮腫のステージIV。しかし二人が目を離した隙に、広瀬はどこかへ行ってしまうのだ。

 初期研修も残りわずかとなった2月。良太の研修先は腎臓内科。そこで担当するのは、生体腎移植を控えた桐生鈴音(植原星空)という17歳の少女。母親の麗香(松永玲子)がドナーであり、鈴音は移植手術を終えたら麗香が営む老舗料亭と業務提携をするホテルチェーンの御曹司と結婚するのだという。しかし直前の検査で肝機能の数値に異常が見つかる。原因がわからないため手術は延期となり、麗香は移植手術をすることが相手方の結婚の条件だと焦りを見せはじめる。そして再検査では異常が見つからなかったものの、今度は麗香の心電図に心房細動が見られ、またしても手術は延期となってしまう。

 今回の患者にまつわる“ミステリー”の部分を先に言ってしまえば、鈴音の透析治療などを担当してきた臨床検査技師の小笠原(若林時英)が故意に検査結果を改ざんしたという話だ。透析治療で顔を合わせるうち、いつしか二人の間に恋が芽生え、鈴音の結婚を阻止するために罪を犯す。小笠原は自分が結婚して腎臓をあげたいと言い出し、それまで厳しかった麗香も娘の本心を聞いて急に穏やかになり、結果的に小笠原が辞表を提出するだけで丸く収まる。この一連を良い話に見せてしまう点にはありとあらゆる倫理観の欠如を感じずにはいられないのだが、一旦それは置いておくことにする。

 あくまでもこのドラマの終盤の展開を支えるのは「親子関係」と「同期」という二つのキーワードだ。前者はもちろん良太と広瀬の関係を軸にしており、広瀬は自分の余命が幾許もないことを知って、かつて冴木とした約束を破って息子である良太を見るために純正医大に来たことを明かす。一方で、実の父がすでに亡くなっていると思っている良太は、継父である幸一(矢柴俊博)から家族で一緒に静岡に行かないかと誘われ、考え抜いた末に断りを入れる。そしてこれまで気を遣ってばかりいたことをやめると宣言し「これでやっと家族になった」と微笑み合うわけだが、これから良太が真実を知ることになると思うと、なんだかとても苦しい気持ちにさせられてしまう。

 後者は初期研修が終わりに近付き、進路をどうするかと悩む良太たち研修医の物語に結びついていく。それを今回、腎臓内科の指導医・大賀(片桐仁)と検査科の医師・竜崎(山中聡)の関係によって(これのきっかけとなるのが先述の小笠原の行為である)、また立石(松雪泰子)の口から語られる、広瀬と冴木との研修医時代のエピソードによってあらわされていくのである。みどり(池田エライザ)や裕也(矢本悠馬)も進む道を決め、一人取り残されてしまう良太。最終話では広瀬との関係と進路、ふたつの大きな試練が彼にのしかかってくるのだろう。

■放送情報
土曜ドラマ『祈りのカルテ 研修医の謎解き診察記録』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜放送
出演:玉森裕太、池田エライザ、矢本悠馬、濱津隆之、堀未央奈、YU、松雪泰子、椎名桔平、原田泰造
原作:知念実希人『祈りのカルテ』シリーズ(角川文庫/KADOKAWA)
脚本:根本ノンジ
演出:狩山俊輔、池田千尋
チーフプロデューサー:田中宏史
プロデューサー:藤森真実、戸倉亮爾(AX-ON)
音楽:サキタハヂメ
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/inorinokarte/
公式Twitter:@inorinokartentv
公式Instagram:@inorinokartentv

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