『チェンソーマン』若い視聴者からなぜ熱狂的な支持? 中山竜監督が追求するアニメ表現

 テレビ東京系で毎週火曜24時から放送されているアニメ『チェンソーマン』が、盛り上がりをみせている。本作は、チェンソーの悪魔と契約した少年デンジが、公安のデビルハンターとして戦う姿を描いた物語で、原作は『週刊少年ジャンプ』で藤本タツキが連載していた同名漫画。現在は漫画アプリ『少年ジャンプ+』で第2部が毎週配信されているのだが、アニメと同じ火曜24時に最新話が配信されるため、火曜24時のSNSは『チェンソーマン』の話題でもちきりである。筆者も『週刊少年ジャンプ』で連載されていた時から『チェンソーマン』のファンだったので、アニメ化は楽しみにしていた。

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 アニメ版『チェンソーマン』は、原作漫画の中にあった映画的な持ち味を活かした作りとなっており、実写映画的なアプローチが強まっている。大きな違いはアクションの見せ方だろう。たとえば第1話の、デンジがチェンソーマンに変身してゾンビの悪魔が率いる無数のゾンビたちと対決する場面は、漫画では見開きの大ゴマでデンジがゾンビたちと対峙する場面を描いた後、細かい戦闘描写は大胆に省略されている。対してアニメ版では、ゾンビと戦う場面を丁寧に描いており、動きの激しいアクションとカメラワークを用いることで、立体感のある戦闘シーンとなっている。

 第3話でデンジとコウモリの悪魔が戦う場面も同じアプローチとなっているのだが、静止画の連続によって読者に行間を想像させる漫画と、画を動かすことで物語を紡ぐアニメの違いが大きく表れている。また、第5話でマキマが「銃の悪魔」について語るくだりは、漫画では「11月18日 午前10時」「『銃の悪魔』日本に26秒上陸」「5万7912人 死亡」「アメリカ124秒上陸 54万8012人 死亡」と、各国の死亡者数を次々と表記していく場面があったのだが、アニメ版ではカットされている。好きなシーンだったため、カットされたこと自体は残念だったが、逆にカットされたことでこの描写が、漫画ならではの表現だったことに気付かされた。

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 アニメ版『チェンソーマン』は、漫画的表現を封印し、動かすことで全てを表現する映画的手法に落としこもうとしている。その姿勢はとてもストイックなもので、中山竜監督を中心とするアニメスタッフが、原作をリスペクトしているからこそ、漫画をそのままなぞるのではなく、アニメだからこそできる表現を追求していることがよくわかる。

 それは、デンジの描き方の違いにも強く表れている。原作漫画では、デンジの悲惨な生活環境を描きながらも、彼自身は飄々としており、そのギャップが独自のユーモアにつながっていた。対してアニメ版のデンジは、声を担当する戸谷菊之介の演技もあってかナイーブなものとなっており、年相応の男の子の心情に近いものとなっている。

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