『invert 城塚翡翠 倒叙集』で変わる清原果耶の“性格” 倒叙ミステリーの魅力を解説

『invert 城塚翡翠 倒叙集』の魅力

 赤い縁のメガネをかけた清原果耶と寄り添う小芝風花。新番組『invert 城塚翡翠 倒叙集』(日本テレビ系)の放送が11月20日からスタートするという告知とともに公開されたビジュアルイメージが、それだった。霊媒探偵・城塚翡翠=清原と、彼女のパートナーである千和崎真=小芝。相沢沙呼による同名原作小説の表紙デザインをなぞったものである。

 『invert 城塚翡翠 倒叙集』は新番組といいつつ、前週まで放送されていた『霊媒探偵・城塚翡翠』(日本テレビ系)の続編であり、同番組に関してもやはり原作である『medium 霊媒探偵城塚翡翠』(講談社)の表紙通り、両手首に赤いものを巻かれた清原の写真が、告知の中心となっていた。どちらも、遠田志帆が描いた表紙イラストの再現率の高さに目を見張ったものである。

 ただ、再現率の高さは、すでに小説を読んだ人には原作をより意識させることになるし、ドラマではまた別のオリジナルストーリーを展開します、小説と実写映像は別ですといった方向づけを封じたようなものである。その意味で、自らハードルを上げたのだ。

 『medium 霊媒探偵城塚翡翠』では、3つの難事件の謎を霊媒師の翡翠と推理作家の香月史郎のコンビが順番に解いていく。それらと並行して発生していた女性連続殺人の真相が終盤で指摘され、以前の3事件の解決についても隠れていた経緯が明かされる、凝った作りの小説だった。「すべてが、伏線。」というキャッチコピーを付され2019年に刊行された同作が、同年のミステリーランキングで軒並み1位となり、翌年に第20回本格ミステリ大賞を受賞したのも当然と感じられる出来栄えだったのである。

 それに対し、ドラマ『霊媒探偵・城塚翡翠』は、原作にあったどんでん返しの面白さをちゃんと味わえるものになっていた。ミステリーとしてブレない内容になったのは、相沢沙呼がTwitterで語っている通り、原作者の彼自身がドラマのシリーズ構成にかかわっていることが大きかったのだろう。

 特に、『霊媒探偵・城塚翡翠』最終話における清原の謎解き披露の長台詞は、評判がよかったようだ。他の登場人物や視聴者が気づかなかった点を拾い上げ、組み立てた推理を語っていく。その名探偵としての見せ場に華があった。キャラとしての可愛さを強調しつつ、相手を苛立たせもする翡翠の「あれれ?」という口ぐせは、イラストが表紙の原作を読んだ時には、私の脳内でアニメ声優的な口調で想像された。一方、ドラマでは生身の清原が、犯人を小馬鹿にした感じでありつつ、やりすぎない絶妙なさじ加減で言ってくれたのだ。

 しかし、『霊媒探偵・城塚翡翠』放送途中には、霊能力を持つと称するいわば不思議ちゃんであり、男が守りたくなるような、あざとくもある可愛さを示す城塚翡翠というキャラクターに批判的な声もあったようだ。そうして途中で視聴をやめた人からすれば、最終話の評判のよさはわけがわからないかもしれない。原作を既読の人、ドラマを全部観た人には、翡翠が可愛くあることの意味や強みが、意外性に満ちた最終話で理解できたのだが、このへんは、ミステリーを連続ものとして届ける難しさである。途中でドラマから離脱した人は、後追い視聴をして、裏にあった真相を確かめてほしいと思う。

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