『クロサギ』平野紫耀と山本耕史が見事な共闘 宿敵との対決だけに留めない作り手の気概

『クロサギ』平野紫耀と山本耕史が共闘

 白石(山本耕史)から御木本(坂東彌十郎)の情報をもらい、桂木(三浦友和)に黙って動き始めた黒崎(平野紫耀)。そんななか桂木から与えられたのは、ヘッドハンティング詐欺のシロサギを喰うという簡単な仕事であり、黒崎はそれをわずか1週間で片付けてしまう。その仕事をきっかけに思わぬかたちで御木本へと繋がる糸口を見つけることとなり、白石に協力を仰ぎながら御木本を“喰う”ための作戦に取り掛かる黒崎。その頃、御木本が新たな詐欺を仕掛けているという情報を掴んだ神志名(井之脇海)たち警察は、御木本逮捕に向けた準備を始めるのである。

 11月11日に放送された『クロサギ』(TBS系)は、ドラマのまだほんの序盤である第4話とは思えないほど大きな山場を迎えることになる。黒崎にとって家族を奪った宿敵であり、彼が“クロサギ”であることの理由でもある御木本との直接対決。2006年版の時には原作が完結しておらず描かれなかったこの対決こそ、この2022年版が作られるに当たっての最大の触れ込みであったわけだが、それがこんなにも早くにやってくるとは。

 それ以上に驚くべきは今回のエピソードの密度である。冒頭わずか10分足らずでヘッドハンティング詐欺のシロサギをまんまと喰ってしまい、そのボスが御木本であるとわかって一気に火がついた黒崎は、白石から御木本の本当の狙いである「M&A詐欺」の存在を聞かされ、ターゲットにされた企業へと近付く。序盤の展開で目を引くのは、前回あれほど火花を散らしあった白石との共闘ぶり。パンケーキを食べながらの相談や、封筒に書かれた「まほうのどうぐ」も然り、二人の関係性がシリアスな空気を和らげる有効な緩衝材となっていることは一目瞭然だ。

 そしてそのまま黒崎vs御木本の対決へと物語は進んでいき、相変わらず複雑な手を使って黒崎は御木本を見事に釣り上げる。この一連は、原作の最初のシリーズにおけるクライマックス部分に該当する。つまりコミックスでいえば20巻に収録された内容が、丸々すべてこの1時間(放送時間としては47分ほどだ)に凝縮されているということだ。そこに氷柱(黒島結菜)との関係の変化や、黒崎のことを気遣う氷柱の父・辰樹(船越英一郎)との関わり合いまでも注ぎ込まれる。それはまさに、このドラマを“宿敵との対決”だけに留めないという作り手の気概であり、“対決後”のストーリー展開をしっかりと見据えていることを証明しているのだろう。

 さて、終盤に社長室から出た御木本を神志名たちが待ち構えているというシーンで、呆然としている黒崎を神志名はちらりと見やる。この二人の対峙はすでに前回の冒頭シーンであったわけだが、あらかじめもっと溜めを聞かせていた方がよりこのシーンの印象が強まったのではないかと思えてしまう。もっともそれは、今回のドラマの構成上は仕方のないことか。一度は連行されたものの、被害届が(桂木の差し金で)取り下げられたことで釈放される御木本。桂木の指示でそれを追いかけ上海へと向かう黒崎。第5話というキリの良い次回が、前半戦の本当のピークというわけか。

■放送情報
金曜ドラマ『クロサギ』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:平野紫耀(King & Prince)、黒島結菜、山本耕史、坂東彌十郎、船越英一郎(特別出演)、三浦友和
原作:黒丸、夏原武(原案)『クロサギ』シリーズ(小学館刊)
脚本:篠﨑絵里子
プロデューサー:武田梓、那須田淳
演出:田中健太、石井康晴、平野俊一
製作著作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/kurosagi_tbs/

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