平野紫耀主演『クロサギ』など秋ドラマでも豊作 ダークヒーローが活躍する作品の系譜

平野紫耀らダークヒーローの物語に注目

 秋の夜長にはダークヒーローがよく似合う。だからなのか、秋ドラマにはダークヒーローものがいくつも見られる。

 平野紫耀が“詐欺師を騙す詐欺師・クロサギを演じる『クロサギ』(TBS系)、高橋メアリージュンが非情な女闇金を演じる『闇金ウシジマくん外伝 闇金サイハラさん』(MBS/TBS、以下闇金サイハラさん』)、池田エライザが女悪党・ドロンジョの若き日を演じる『WOWOWオリジナルドラマ DORONJO/ドロンジョ』(以下、『DORONJO』)といったラインナップだ。

 ダークヒーローとはいったい何か、あらためて考えてみよう。まず、清廉潔白で、まわりにも優しく、道徳的で、理想や目的に向かって邁進していくような人物が正統派ヒーローである。正統派ヒーローとしてすぐに思い浮かぶのが、『半沢直樹』(TBS系)の半沢直樹、『警視庁・捜査一課長』(テレビ朝日系)の大岩純一、古くは『水戸黄門』(TBS系)の水戸光圀らだろう。半沢や大岩のように私生活では家族を大事にしているのも正統派ヒーローの特徴だ。

 正統派ヒーローの逆がダークヒーローだ。悪徳にまみれ、人格者とは到底呼べないような振る舞いが多く、目的を達成するには手段を選ばないし、非合法な行為も辞さない。そして、自分のルールに従って生きる。これがダークヒーローである。なお、彼らはあくまで自分の意志で行動しており、サスペンスものに登場する、巻き込まれ型主人公はダークヒーローには含めない。

 『クロサギ』の黒崎高志郎(平野紫耀)、『闇金サイハラさん』の犀原茜(高橋メアリージュン)はすべてこれらのダークヒーローの条件にあてはまっている。黒崎も犀原も周囲に冷たく、優しさを表すことはない。復讐などの目的を遂行するために非合法な手段を用いる。そして「殺しはやらない」「ヤクザに屈しない」など自分の掟を持っている。悪党になるまでの前日譚である『DORONJO』の泥川七音(池田エライザ)は、まだ悪事に手を染めていないが、いずれ悪事に手を染める場面が描かれるだろう。

 もう少し詳しく分類していこう。ダークヒーローが活躍する作品には、大きく分けて3つの種類がある。

 まず一つは「悪が悪を裁く」タイプの作品。『クロサギ』はこれにあたる。カネをもらって極悪人を成敗する『必殺』シリーズ(ABC・テレビ朝日系)、悪党が集められてミッションを遂行するコミック『ワイルド7』や映画『スーサイド・スクワッド』シリーズなどがそうだ。彼らはもともと悪党であり、悪党を成敗するからといって自分たちに「正義」があるとは考えていない。近年のドラマでは福士蒼汰主演『DIVER―特殊潜入班―』(カンテレ・フジテレビ系)や吉沢亮主演『GIVER 復讐の贈与者』(テレビ東京系)があてはまる。綾野剛主演の『アバランチ』(カンテレ・フジテレビ系)も近い(彼らは犯罪者ではないが)。

『クロサギ』11/11(金)#4 ついに宿敵との直接対決!お前にずっと聞きたかったことがある【TBS】

 ダークヒーローに極悪人を成敗させるメリットは、まっとうなヒーローや法律が手の届かない狡猾な悪にも手が届くというもの。『クロサギ』の黒崎は、詐欺の被害に遭って一家心中した家族の生き残りだが、警察や検察への不信を繰り返し口にしている。いくら詐欺師を逮捕して裁判にかけても、カネは戻ってこないし、被害者は助からない。だから復讐のため、自分が詐欺師になって悪どい詐欺師たちを破滅に追い込んでいく。

 とにかく能書きも理屈もなく悪党を倒してくれるから、視聴者はスカッとしてダークヒーローに喝采を送る。普段、ニュースなどで腹が立ったり、モヤモヤしたりする悪事もダークヒーローなら何とかしてくれるんじゃないかと期待するわけだ。

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