『祈りのカルテ』玉森裕太の医師人生における重要な出会い 原田泰造が見せた不審な動き
2年間ある初期研修の1年目が終わる、その最後の1カ月が描かれた11月5日放送の『祈りのカルテ 研修医の謎解き診察記録』(日本テレビ系)第5話。今回良太(玉森裕太)の研修場所となるのは「循環器内科」。特別病棟に入院しているVIP患者との関わり合いを通して描かれる今回のストーリーは、ドラマ前半の大きなひとつの節目だ。これまでのように患者が隠している秘密や嘘を解き明かすといった“謎解き”以上に重きが置かれるのは、これから始まるであろう良太の医師人生における重要な出会いである。
「絶対に口外しないこと」を条件に、指導医の上林(高橋努)に連れられて特別病棟へとやってきた良太とみどり(池田エライザ)。そこに入院していたのは女優の愛原絵理(成海璃子)で、彼女は難病の特発性拡張型心筋症を患っていた。実は彼女は循環器内科に入院していた沙智(豊嶋花)の姉だった。絵理は「ここに入院していることは誰にも言わないで」と念を押してくる。そんななか、絵理の頼みを聞いて中華料理屋に行った良太は、偶然にも広瀬(原田泰造)と遭遇。テレビに映った絵理の話題になり、なんとかごまかすのだが、翌日発売された週刊誌に、絵理が極秘入院しているという記事が掲載されるのだ。
この「誰が週刊誌に情報をリークしたのか」という点が、今回のエピソードにおける一応のミステリー的な局面である。病院を訪ねてきて1万円を手渡し、冴木(椎名桔平)を見るなり慌てて逃げだす広瀬の不審な動きを訝しむ良太や、沙智に思わず「似てる」と言ってしまうみどり。絵理の所属事務所の社長が会見を開き、億単位とも言われる高額の移植手術費用の寄付を募ったかと思えば、その社長は横領の嫌疑がかけられるなど、登場人物たちの行動言動ひとつひとつが、医療現場でも特殊な状況であるVIP患者をめぐる一連に費やされていく様は、これまでとは少々異なる雰囲気をドラマに与えていく。
こうした空気が一転するのは、終盤に良太が絵理の病室を訪ねるシーンであり、ここまでのイレギュラーな運びがすべて意味を持つ。情報のリークなどの一連の事柄が、絵理自身の考えだとわかり、彼女の本当の目的を知る良太。これまでカルテを通して考えをめぐらせた結果「カルテがすべて教えてくれました」と決め台詞を繰り出していた彼は今回、絵理の言葉ですべてを見通し、「あなたの言葉がすべて教えてくれました」と告げる。それはカルテを介して患者と向き合っていた良太が、患者と直接向き合ったことを示す瞬間であり、ある意味でそれはカルテという“記録”を無効化しているものとも取れる。
しかし、絵理の突然の死を迎えたクライマックスで受け止めきれずに涙を浮かべる良太に立石が告げる「これから君はもっとたくさんの患者さんの死に向き合うことになる。もしかしたら死が日常になっていくかもしれない。でもそれに慣れるな。今日の気持ちを一生忘れるな」の言葉は、病院という場において決して避けることのできない患者の死、すなわち絵理の死を心の中に繋ぎ止めて“記憶”しておくことを良太に求めるのである。そうして良太はカルテに向かい、彼女とのやりとりを書き込んでいく。それは彼女の生きた証を“記録”するためだ。“記憶”というものは、“記録”によってより強固なものになる。誰かと向き合うということが、決して一時的なもの、一過性なものではないのだと気付かせてくれるラストは、物語の節目として非常に大きな意味を持つことだろう。
■放送情報
土曜ドラマ『祈りのカルテ 研修医の謎解き診察記録』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜放送
出演:玉森裕太、池田エライザ、矢本悠馬、濱津隆之、堀未央奈、YU、松雪泰子、椎名桔平
原作:知念実希人『祈りのカルテ』シリーズ(角川文庫/KADOKAWA)
脚本:根本ノンジ
演出:狩山俊輔、池田千尋
チーフプロデューサー:田中宏史
プロデューサー:藤森真実、戸倉亮爾(AX-ON)
音楽:サキタハヂメ
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/inorinokarte/
公式Twitter:@inorinokartentv
公式Instagram:@inorinokartentv