玉森裕太が“王道ラブストーリー”を復活させる? 『NICE FLIGHT!』で類まれな愛嬌を証明
昔ながらの視聴率基準では何かと低調ぶりが取り沙汰されてばかりの7月期の民放連続ドラマ。それでもいざ蓋を開けてみれば、近年あまりにも頻発していた視聴者の興味を無理矢理にでも持続させようとする荒療治を選ばずに、純然とした“連続ドラマ”として登場人物たちの物語を切り取る良作がいくつも見受けられる。そのなかでもひと際愛すべき作品を選ぶとすれば、テレビ朝日系の金曜ナイトドラマ『NICE FLIGHT!』を挙げたい。
Kis-My-Ft2の玉森裕太が演じるパイロットの倉田粋と、中村アン演じる航空管制官の渋谷真夢の恋模様を主軸にして、パイロットや整備士、キャビンアテンダントにグランドスタッフ、そして航空管制官など、羽田空港に勤める人々の群像を描いていく。もとより大勢の人々が仕事内容の垣根を超え、飛行機を安全に飛ばすという一つの目標に向かっている空港という場所は、あらゆる職業ドラマの舞台のなかでも特筆して群像性やドラマ性に秀でており、これまでも幾多の傑作が生まれてきたことはあえて説明するまでもないだろう。
第6話のなかで、“ナナロク”(ボーイング767)から“ナナハチ”(ボーイング787)への移行訓練中の粋が、“ナナロク”の機体に手を添えて別れを惜しむシーンが描かれた。安全のため異なる機種に乗ることができないことから、訓練を終えたらもう“ナナロク”には乗ることはない。それまでの思い出を噛み締めながら、次のステップに進んでいこうとするさまは、こうしたお仕事ドラマにおいて欠かすことのできない愛着と敬意を物語る。また空港や飛行機への愛情を、目を輝かせて語る粋の好きなものに真っ直ぐな姿からは、ひたすら勇気をもらえるほどだ。
そんな粋という主人公を作り出すうえで、玉森が配役されたのはまさに適任だ。とびきり人当たりが良く、誰に対しても距離感が近い。同じ空港内で働く他の業種の人々とも気さくに言葉を交わし、時にはそれが周囲の登場人物の物語さえも動かしていく。昨年1月クールに放送された『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(TBS系)における“子犬系”からは少し成長しつつも、あふれんばかりの愛嬌を放出するキャラクターというのは、まさに玉森の十八番といってもいいだろう。
粋の“コミュ強”ぶりが、正反対のタイプのヒロインの殻を破っていく過程をただ流れに沿って描くのではなく、その好対照が生み出す“もどかしさ”がラブストーリーに抑揚を生む。そしてそれが適切に、互いの職業に良い影響をもたらしていく。映画やテレビドラマにおいて「ラブストーリー」の人気が低迷して久しいわけだが、そのなかでここまでシンプルに、かつ大人のぎこちない恋模様を描くというのはなかなかチャレンジングなことだ。トレンディなものでもなければラブコメでもない。絶妙な塩梅を保ちながら、お仕事ドラマとラブストーリーの望ましい両立が図られていくのである。