『silent』は単なる“美しい物語”ではない 何度も見返すことで深まる解釈
今一度考え直す言葉の重みとコミュニケーションの重要性
もう1つの理由は、セリフから感じる言葉選びの重みだ。
すでに名シーンとして幾度となく取り上げられているシーンではあるが、想は紬に対して「好きな人がいる、別れたい」とメッセージを送り、2人の恋に終止符を打った。しかし、そのことについて8年後、紬が「好きな人ができたってLINE送ったでしょ?」と尋ねると、想はそれを否定。「好きな人がいる、って送った」と返し、その「好きな人」とは紬のことだったと明かした。想は、受け取り側である紬のミスリードを誘っただけで、まったく嘘をついていなかったのだ。
「いる」と「できた」ーーたった3文字であり、されど3文字。SNSやメッセージなどを通したテキストでの会話やコミュニケーションが増えた近年。自分の送った言葉が相手に「そういうつもりじゃなかった」で伝わった経験は、誰もが1度はあるはず。それにもかかわらず、私たちは、気を許した間柄の人には特に、雑な言葉を選んでしまいがち。そして、その言葉の選択による違和感が少しずつ積み重なって、関係が破綻することも珍しくない。同ドラマでの言葉選びの丁寧さを見ていると、日常のコミュニケーションについて今一度考えさせられる。
また、第5話以降、このドラマの中における言葉を交わすことやコミュニケーションは一つの肝となるに違いない。第4話までを見ての感想だが、登場人物、全員が優しいがゆえにお互いの心を想像しては、行動を先走ってしまうことも目立つようになってきた。
例えば、第4話で想と久しぶりに他愛のない会話をし、仲間と会うフットサルを企画した湊斗。一見、親友に対する優しさではあるが、それを想は本当に望んでいたのだろうか。また、同話で紬との別れを決意した湊斗は想に「(紬は)この3年、本当は楽しくなかったと思う」と話していたが、それは本当に紬の本心なのだろうか。
相手の意見を聞くことなく思い込みで行動すること、相手の心の中を見透かした気分になってしまうことは、時として自己満足でしかない。そもそも他人である以上、相手の心を完璧に理解することなんて困難だ。もしも私が、この物語の世界の人物なら、湊斗にも、紬や想にもそのことを伝えたい。
そしてこれは、我々視聴者に対するメッセージなのかもしれない。どうすれば私たちは幸せになれるのか、相手の幸せ、言葉や会話とは何か。同作を通じて見つけていきたい。
参照
※ https://www.fujitv.co.jp/silent/news/news10.html
■放送情報
木曜劇場『silent』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:川口春奈、目黒蓮(Snow Man)、鈴鹿央士、桜田ひより、板垣李光人、夏帆、風間俊介、篠原涼子ほか
脚本:生方美久
演出:風間太樹
プロデュース:村瀬健
音楽:得田真裕
制作:フジテレビ
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