『silent』を彩る目黒蓮×鈴鹿央士の“友愛” 模索する中で決意を固めた湊斗(ネタバレあり)
「変わらないね」という言葉は、本当に“変わっていない人”にかけるのだろうか。『silent』(フジテレビ系)の第4話では、想(目黒蓮)と湊斗(鈴鹿央士)が仲直りし、これまでのような関係に戻ろうと模索する。“変わらない”こと、“元に戻る”ことにフォーカスしながら、ゆっくりと移ろう紬(川口春奈)や想、湊斗の関係を描く。
一度は想と向き合うことから逃げ出しそうになった湊斗だが、紬の計らいもあり想ときちんと話すことに。音声を文字に変えてくれるアプリやスマホのメモ機能を使いながら会話する2人は、初めこそぎこちなかったものの、徐々に他愛もない会話が増える。変わらない想の姿に安心した湊斗は、フットサルに誘うなど積極的にコミュニケーションをとり、かつての同級生たちと再会させるのであった。想もまた、級友との久々のフットサルを楽しむ。だが、それもつかの間、湊斗は紬との別れを決意するのであった。
耳が聞こえなくなってしまった想を受け入れることにあれだけ抵抗を示していた湊斗も、想と対話することで徐々にその混乱を整理していく。想のことを「変わらない」と話す湊斗だが、ふとした時に“聞こえなくなってしまった想”は現れる。遠くからの会話がスムーズにできないこと、サッカーのホイッスルが聞こえないこと。しかし湊斗は、想の心が変わらなければ、3人の関係も、サッカー部での関係も元に戻せると思っていたようにも見えた。これまで通り紬と想が付き合えば自分の苦しみも消えて、元のしあわせな関係に戻っていけると一縷の望みを持ったのかと思うと、湊斗の切実な気持ちに胸が苦しくなる。そんな湊斗を鈴鹿央士が演じることで、突き抜けた優しさと、繊細な感情が視聴者の心を震わせる。それらの表現は、想を演じる目黒蓮が時折見せる寂しそうな表情や優しい瞳と交錯し、お互いを想い合うまっすぐな友愛で作品は彩られていく。
本作は、紬、想、湊斗の恋模様と同時に、ろう者と聴者がどう関係を築いていくのかも描いている。湊斗のように想のありのままを受け入れようと努力する者、紬のように変化を理解し想い馳せる者、春尾(風間俊介)のように聴者とろう者にまだ隔たりを感じている者。それぞれが接し方を考え、さまざまな答えを模索しながら気持ちの良いコミュニケーションをする方法を探す。手話を覚え、相手に寄り添うこともあれば、アプリに頼りながらもこれまで通りに接することも。ただ、春尾が残した言葉の通り、平等に扱うことが正解かどうかは誰にもわからない。フットサルに顔を出した想が、口々に「変わらない」と言われ、わざわざ全員とハイタッチしたことを、平等だと捉えるか、特別だと捉えるかは人それぞれの感じ方だろう。ただ『silent』はこうした些細な違和感を浮き彫りにし、それについて考えたり話し合うきっかけを与えてくれる。それぞれの人物が今どう感じているのかも、視聴者の数だけ解釈がある。こうして対話し、理解を深めることが結果として私たちがより良い社会に向かっていくきっかけになるのではないだろうか。肝心なのは答え探しではなく、模索する過程なのだと、湊斗の姿から感じられた。
湊斗は紬との別れを選んだが、紬の心は今どこにあるのだろうか。そして想は湊斗の想いを知ってなお、どんな道を選ぶのだろうか。模索する3人を見守りたい。
■放送情報
木曜劇場『silent』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:川口春奈、目黒蓮(Snow Man)、鈴鹿央士、桜田ひより、板垣李光人、夏帆、風間俊介、篠原涼子ほか
脚本:生方美久
演出:風間太樹、髙野舞、品田俊介
プロデュース:村瀬健
音楽:得田真裕
主題歌:Official髭男dism「Subtitle」(ポニーキャニオン)
制作:フジテレビ
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