脚本家・金子茂樹が明かす仲野太賀への信頼 「苦しい」と思いながらも突き詰める面白さ
「どうやったら面白くなるか、最後まで追求したいんです」
――これまでの作品とは違う脚本だったのかと思いますが、書き終えてみていかがでしたか?
金子:本当に大変でした。なにより物語を進めるうえで、舞台を出られないので、やれることって基本、俳優さんたちの出し入れしかないんですよね。普通のドラマだと別のシーンに飛んで、また戻ってきたりできるじゃないですか。30分の枠で、1話は正味23分ぐらいなのですが、書いても書いても終わらない感覚でした。
――結末まで大まかな箱を作って書いていったのですか?
金子:いえ、何も決めずにスタートしました。最終回の話が見えてきたのは、前話を書き終わったときですから(笑)。最終話は、自分でもまったく予期せぬ展開になりました。演者さんたちもびっくりしたと思います。
――結末を想定しないで書くというのは、苦しい作業ではないですか?
金子:プロデューサーさんや俳優さんにとっては、とてもやりづらいのかなと思うのですが、半分言い訳、半分本音として、1話の時点で結末が見えている話って、全然面白くないのかなと思ってしまうんです。言い方は悪いですが、誰でも思いつくような結末なわけで……。今回の話の結末も1カ月前の自分では思いつかなかった。話を進めていくうちに、キャラクターが動くことによって生まれたものなので。プロデューサーさんや監督と打ち合わせしていて「先々はこうなるんですかね?」と言われると「じゃあそれはやめようかな」って思っちゃう。まあ、ひねくれ者なのですが、やっぱり常に「どうやったら面白くなるか」というのは最後まで追求したいんです。
――とても大変な作業のように聞こえます。
金子:辛いですね(笑)。僕は28歳までずっと無職で、やりたいことをいろいろ探したけれど見つからなくて、ようやく今の仕事にたどり着いて。たまたま仕事をくださる人がいて、ここまで続けてきていますが、やっぱり一般的に思われているほど脚本家という仕事はいいものではないですね(笑)。ぱっと面白そうだなというセリフが思いついたときは0.5%ぐらい「この仕事面白いな」と思うのですが、そのセリフを言わせるまでに、膨大な何かを考えなければいけないわけで……。
――でもその苦しさは、金子さんが常に妥協せず純粋に「面白いもの」を追い求めているからなんでしょうね。
金子:例えばある作品をやっていて、ちょっと面白いものができたなと思ったら、それが次の最低値になるので、次はさらにそれを超えなければとハードルが上がってしまう。いつまで経っても「現状維持でいいや」と思える日が来ないので、ちょっと怖いですね(笑)。
――もはや侍ですね。
金子:そんな格好いいものではないですけれどね。自分で自分を苦しめているだけのような(笑)。
――最終回の撮影現場にも行かれたということですが、お客さんが観ている中、ライブのような撮影はいかがでしたか?
金子:ドキドキでした。テレビドラマだとどんな反応なのか分からないところがあるじゃないですか。でも現場で観客の方がリアクションしているのを見ると「あ、ここは拾ってくれたんだ」とか「ここは思ったほどウケてないな」とか気づきが多かったですね。まるでテストの採点を受けているみたいでした(笑)。
――第2話以降の見どころを教えてください。
金子:1話から2話もそうですが、話が進むにつれて、視聴者を心地よく裏切りたいなという思いがどんどん沸いてきていろいろなチャレンジをしているので、ぜひ視聴者の方にはついてきていただきたいです。作品全体としても前半、後半と2つに分かれているような構成になっている中、今後登場するゲストも不思議な人たちばかりなので、注目していただきたいです。
■放送情報
『ジャパニーズスタイル』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:30~0:00放送
出演:仲野太賀、市川実日子、要潤、KAZMA、石崎ひゅーい、檀れい、柄本明
脚本:金子茂樹
監督:深川栄洋
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子
プロデューサー:竹園元、都築歩、中沢晋
制作著作:テレビ朝日
制作協力:オフィスクレッシェンド
©テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/japanese_style/