『俺の話は長い』脚本・金子茂樹が込めるメッセージ 清原果耶ら家族のキャラクターが会話劇の妙に

『俺の話は長い』核心突くフレーズたち

 失恋した春海(清原果耶)が海を見ながらつぶやく「どうして人生の大事なことに限って、誰も教えてくれないんだろう」という問いに、満(生田斗真)が答える「大抵のことは傷付いて覚えるしかない」であったり、そんな満が珈琲屋への未練を断ち切りたいのかわからずにいる中で後輩の海星(杉野遥亮)が言う「よくわからないという気持ちを無理やり切り離さずに、自然に切れて離れるまで時間をかけてみるのもよい」の言葉。会話の応酬の中でふと現れる核心を突くようなフレーズが、金子茂樹脚本作品らしさを感じさせる日本テレビ系列土曜ドラマ『俺の話は長い』。

 19日に放送された第2話では、綾子(小池栄子)に頼まれて5000円の報酬と引き換えに春海を学校へ行くように説得する満と春海とのやり取りと、報酬をめぐっての姉弟が繰り広げるやり合いが描かれた「やきそばと海」、そして毎朝5時半に房枝(原田美枝子)のために珈琲を淹れることよりも定職に就くことが大事だと主張する綾子の言葉から、満が諦めていた珈琲屋への未練と向き合う姿を描いた「コーヒーと台所」のふたつのエピソードが展開。第1話ではふたつのエピソードにストーリー上の連続性がありながらも、それぞれに密接な繋がりが見受けられなかったのに対し、今回はふたつの物語が時間軸以上の関わり合いを持っていたように思える。

 「やきそばと海」の冒頭で提示された、“午前5時半に珈琲を淹れるため、それまでの時間起きている”という満の行動が「コーヒーと台所」のエピソードで掘り下げられたり、前半の物語のフックとなった春海の想い人である同級生の高平陸(水沢林太郎)が後半の房枝の喫茶店に現れたり。さらにはどちらのエピソードでも房枝の(綾子にもしっかりと遺伝している)口の軽さが見受けられたりと、今回から家族5人での暮らしが始まったことで、彼らが作り出す“日常”が積み重ねられながら前進していく様子がはっきりと現れてきているのかもしれない。ホームコメディとしての様相が強く現れた前半に対し、後半では少ししんみりとした空気感でその“変化”を映していく。満が珈琲を淹れなくなっても、いつも通り朝5時半に台所の席に着く房枝の姿。そして段ボール6箱分の未練を売りに出す満。

 今回のふたつのエピソードでひときわ目についたのは、前述した房枝と綾子の口の軽さ然り、満と綾子のリアルな姉弟の会話だったりといった、家族の会話から垣間見えるそれぞれの性格の違いや共通点ではなかろうか。徹底しているようでどこかほころびのある理論武装で相手を言いくるめようとする満と対照的に、義兄の光司(安田顕)は言いたいことをうまく言い出せない。それでいて満と綾子にあるやや内弁慶な気の強さに、継父である光司の引っ込み思案さが伝播した複雑さを持つ春海。彼らの会話がドラマを構成する最大の要素となっているだけに、そのバラバラなようで似通っている者同士のコミュニケーションのバランスが実におもしろく映し出されている。

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