『クロサギ』平野紫耀が詐欺師になるに至った過去のやりとり 暗に仄めかされた最後の敵

『クロサギ』平野紫耀が詐欺師になった経緯

 雇用契約や賃貸借契約といった生活に必需なものから、高額な商品の購入やちょっとしたサブスクリプションサービスの利用に至るまで、世の中には数多くの“契約”があふれており、そこには決まって契約書や約款、利用規約などが存在する。しかし実際にそれを隈なく読んで完璧に理解した上でサインをする人はかなり限られているという。信頼のおける相手であれば、さしたる根拠がなくとも契約を交わしてしまう。10月28日に放送された『クロサギ』(TBS系)第2話で描かれた詐欺の手口というのは、そうした人間の情の部分につけ込んだ、日常生活では比較的身近に起こりうる詐欺が同時多発的に描写されていく。

 推しのアイドルグループのメンバーと出会えるという“出会わせ屋”と嘯き、高額な契約を結ばせて金銭を詐取するシロサギの川中(新納慎也)にまんまと騙され、200万円近い金額を奪われてしまった江本(八木莉可子)。ウェブライターの黒田として彼女に接触した黒崎(平野紫耀)は、川中というシロサギを食うために、今度は大手の同業者を装い手を組むことを持ちかける。一方、自分の住むアパートの大家が黒崎だったことに衝撃を受けた氷柱(黒島結菜)は、同じアパートの一階に住む老人が契約トラブルに巻き込まれたことを知り、持ち前の正義感から率先して手を貸すのである。

 契約書に難解かつ自己に有利な文言を忍ばせることで巧みに法の隙間をかいくぐるというのは、昔からある詐欺の常套テクニックのひとつであろう。そもそも芸能人に出会わせますなどという話自体に信憑性のかけらもないわけだが、少なからず現実でもそのような詐欺行為が存在している以上、“信じたい”人が一定数いるということでもある。序盤で桂木(三浦友和)から川中の情報を得た黒崎に、早瀬(中村ゆり)は「人の欲につけ込んだ詐欺とは違う、大切なものを想う気持ちを利用したクソみたいな詐欺」と一蹴するのも随分と的を射ている。

 そんなクソみたいな詐欺と同時並行で描かれる、黒崎のアパートの住人・天野(津嘉山正種)に降りかかる契約トラブルも一種の詐欺行為である。ひとり寂しく暮らしていた天野は久しぶりに誰かと会話をたことに嬉しさを感じ、言われるがままに契約をしてしまう。結果的にこれもまた、人の気持ちを利用したものといえるだろう。もっともそれは、人が被害に遭う以上、どんな詐欺被害にも共通していえることなのかもしれない。劇中ではこの天野のようなネット通販契約に加え、川中の一件から派生したカードの不正利用詐欺にまで話が広げられる。近年多発する詐欺の手口をひとつのエピソードのなかに複数取り入れるあたり、今回の『クロサギ』は実に抜かりない。

 様々なシロサギたちと黒崎との対峙でひとつのエピソードを構成しながら、その先に待ち受ける宿敵・御木本(坂東彌十郎)との対決がドラマ全体の肝になる。とはいえ今回、黒崎が桂木のもとで詐欺師になるに至った過去のやりとりが回想として描かれ、桂木は密かに御木本と接触。そして黒崎が御木本を倒した先には、業界のフィクサーたる桂木がいることが暗に仄めかされる。この辺りの複雑な師弟関係と、終盤で黒崎のアパートを訪れる警察の神志名(井之脇海)。ほどよいスピード感のなかで、このドラマの持つ群像性は高まりつつあるようだ。

■放送情報
金曜ドラマ『クロサギ』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:平野紫耀(King & Prince)、黒島結菜、井之脇海、中村ゆり、宇野祥平、時任勇気、山本耕史、坂東彌十郎、三浦友和
原作:黒丸、夏原武(原案)『クロサギ』シリーズ(小学館刊)
脚本:篠﨑絵里子
プロデューサー:武田梓、那須田淳
演出:田中健太、石井康晴、平野俊一
音楽:木村秀彬
主題歌:King & Prince「ツキヨミ」(Johnnys’ Universe)
製作著作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/kurosagi_tbs/
公式Twitter:@kurosagi2022tbs
公式 Instagram:kurosagi2022_tbs

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