新たにドラマ化された『クロサギ』は前作を超えられるか 平野紫耀が気迫たっぷりの演技

新『クロサギ』は前作を超えられるか

 2006年に山下智久主演でドラマ化された(その後2008年には映画版も製作された)同名漫画を、今度はKing & Princeの平野紫耀を主演に配してドラマ化した『クロサギ』(TBS系)。年々巧妙化する詐欺被害、と巷でよく耳にするように、前回のドラマ化から15年あまりの間に社会情勢やら情報機器やらがめざましく変わり、流行り詐欺の手口も変化している。それだけに、いかに現代的に物語を置き換えて見せていくのか。

 過去に父親が詐欺の被害に遭い、家族が無理心中を図るなかで一人生き残ったという過去を持つ黒崎(平野紫耀)は、詐欺師界のフィクサーで表向きは甘味処を営む桂木(三浦友和)に飼われながら、詐欺師を騙す詐欺師=クロサギとして生きている。そんな黒崎が狙うターゲットの詐欺師“シロサギ”は、企業セミナー詐欺を行なう春日(高橋光臣)という男。黒崎はまず詐欺被害者である吉川辰樹(船越英一郎)の元を訪ね、自ら詐欺師であることを告白し協力を申し出る。吉川の娘・氷柱(黒島結菜)に猛反発されながらも、吉川から春日の手口を聞くうちに、黒崎のなかで過去の記憶が蘇ってくるのである。

 冒頭から原作コミックや2006年版の第1話で描かれた“先日付小切手”を使って騙し取り返すテクニックを繰り出す黒崎の姿がさらりと描かれ、“クロサギ”としての手口の巧みさと変装スキルを見せる。そしてメインとして描かれる“シロサギ”の春日という人物は、2006年版では最終話で描かれたフランチャイズチェーン詐欺師と同姓同名。黒崎の宿敵である御木本(坂東彌十郎)へと繋がる詐欺師であるという点も共通しており、黒崎が春日に御木本を取るか自分の身の安全を取るかを選択させるなど、御木本への執念が早くも剥き出しになっていくのだ。

 この第1話を観る限り、物語の進行速度はかなり速いものになるのではと予測できる。というのも今回の2022年版、前回の時にはまだ完結していなかった原作が完結したことを踏まえて物語が運ぶということが明言されている。つまりは黒崎と御木本の直接対決が最大の見せ場となるわけで、これは2006年版を観ている世代にとっても目新しい作品となるはずだ。それでも脚本には篠﨑絵里子、演出には(第1話は田中健太だったが)石井康晴と平野俊一といったオリジナルメンバーが再登板。全体的な作品のトーンも2006年版に近しいものを感じるのは非常に楽しいものがある。

 さて黒崎を演じる平野は第1話から気迫たっぷりの演技を見せ、視聴者をこの作品の世界へとしっかりと引き込んでくれる。また氷柱役の黒島はまだ『ちむどんどん』(NHK総合)のイメージがこびりついているが、ある意味こちらのような生真面目なキャラクターの方が合っているように思える。主要キャストのなかで気になるのは、2006年版の哀川翔よりも若くなった刑事の神志名役を演じる井之脇海だ。2006年版の見せ場は何と言っても黒崎と神志名のニアミスシーンの緊張感。それが今回のドラマではいかようにスリルを盛り立ててくれるのか期待しておきたい。

■番組概要
金曜ドラマ『クロサギ』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:平野紫耀(King & Prince)、黒島結菜、井之脇海、中村ゆり、宇野祥平、時任勇気、金井勇太、永瀬莉子、冨手麻妙、木村文哉、前川泰之、山本耕史、坂東彌十郎、船越英一郎(特別出演)、三浦友和
原作:黒丸、夏原武(原案)『クロサギ』シリーズ(小学館刊)
脚本:篠﨑絵里子
演出:田中健太、石井康晴、平野俊一
プロデューサー:武田梓、那須田淳
製作著作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/kurosagi_tbs/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる