『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』宴で起きた惨劇 ターガリエン家に迫る内戦と崩壊の時

『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』で起きた惨劇

 私たち視聴者以外にこの目線の均衡を読み取っていたのがレーナーの護衛サー・ジョフリー・ロンマウスだ。彼はレイニラに向けてただならぬ視線を向けるクリストン・コールの存在に気づくと、自身とレーナーの関係を引き合いに出し「俺たちで2人を守ってやろう。そうすれば皆、安泰だ」と嘯く。しかし、既に騎士の誓いを破り、自責の念でボロボロになったクリストンにその言葉は脅迫としか響かなかった。

 宴も佳境を迎える中、デイモンは群舞を縫ってレイニラに歩み寄ると彼女を主賓席から遠ざける。2人だけのヴァリリア語で囁き合うレイニラは迷うことなく「連れ去って。私はまだ結婚していない。王の楯を蹴散らしてドラゴンストーンへ私を連れ去り、妻にしなさい」と挑発する。デイモンが王女の頬を掴んだその瞬間、宴席から悲鳴が上がる。各人の目線を捉えてきた監督のクレア・キルナーが一転、群衆を外から映して混沌の正体を明かさないサスペンスに、私たちは一体なにが起こっているのかと固唾をのむ。やがて見えてきたのはクリストン・コールがサー・ジョフリー・ロンマウスを無惨にも殴り殺している姿だった。

 ウェスタロス史上に残る盛大な祝宴を謳ったレイニラとレーナーの婚礼は翌朝、宴席の食事も片付けられないまま急遽執り行われ、その最中ヴィセーリス王はついに倒れる。ロイヤルウェディングは血に染まり、すでに鼠がたかるターガリエン家には内戦と崩壊の時が迫っていた。シーズン1はここで折り返しとなり、第6話では約10年の時間経過があると言われている。素晴らしいミリー・オールコック、エミリー・キャリーからエマ・ダーシー、オリヴィア・クックへとキャストは交代され、続く第6〜7話ではミゲル・サポチニクが、第9話では再びクレア・キルナーがメガホンを取ることがアナウンスされている。『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』は早くも『ゲーム・オブ・スローンズ』の高みから、さらにその上へと昇り詰めようとしているのだ。

■配信情報
『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』
U-NEXTにて配信中
出演:パディ・コンシダイン、マット・スミス、オリヴィア・クック、エマ・ダーシー、スティーヴ・トゥーサント、イヴ・ベスト、ファビアン・フランケル、ソノヤ・ミズノ、リス・エヴァンス、ミリー・オールコック、ベサニー・アントニア、フィービー・キャンベル、エミリー・キャリー、ハリー・コレット、ライアン・コア、トム・グリン=カーニー、ジェファーソン・ホール、デヴィッド・ホロヴィッチ、ウィル・ジョンソン、ジョン・マクミラン、グレアム・マクタヴィッシュ、ユアン・ミッチェル、テオ・ネイト、マシュー・ニーダム、ビル・パターソン、フィア・サバン、ギャビン・スポークス、サバンナ・ステイン
日本語吹替版キャスト:早見沙織(レイニラ・ターガリエン役)、津田健次郎(デイモン・ターガリエン役)、堀内賢雄(ヴィセーリス・ターガリエン役)、大塚芳忠(オットー・ハイタワー役)、坂本真綾(アリセント・ハイタワー役)、大塚明夫(コアリーズ・ヴェラリオン役)、田中敦子(レイニス・ヴェラリオン役)、諏訪部順一(クリストン・コール役)
共同企画・製作総指揮:ジョージ・R・R・マーティン
共同企画・共同ショーランナー・製作総指揮・脚本:ライアン・コンダル
共同ショーランナー・製作総指揮・監督:ミゲル・サポチニク
製作総指揮・脚本:サラ・ヘス
製作総指揮:ジョスリン・ディアス、ヴィンス・ジェラルディス、ロン・シュミット
監督:クレア・キルナー、ジータ・V・パテル
監督・共同製作総指揮:グレッグ・ヤイタネス
原作:ジョージ・R・R・マーティン『炎と血』
原題:House of the Dragon
翻訳:川又勝利、佐々井朝衣
©2022 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.
公式サイト:https://www.video.unext.jp/title_k/house_of_the_dragon

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