『六本木クラス』さとうほなみ、難役も等身大に見せる表現力 俳優として新たなステージへ

さとうほなみ、難役も等身大に見せる表現力

 『六本木クラス』(テレビ朝日系)第10話で、居酒屋「二代目みやべ」に新たな未来をもたらすべく闘いの場に立ったのは、料理長・りく(さとうほなみ)だ。

 料理対決番組『三ツ星スタジアム』で優勝することを条件に、不動産業界の大物・田辺(倍賞美津子)からの投資話を取り付けた新(竹内涼真)とマネージャーの葵(平手友梨奈)。それを知った巨大企業「長屋ホールディングス」の龍二(鈴鹿央士)は、この優勝を何としてでも阻止すべく、りくが平常心で対決に臨めぬようにとあるリークをする。りくがトランスジェンダーであることを記者にバラし、しかもそのタイトルを「両親困惑」と銘打たせたのだ。

 両親にカミングアウトしていないりくは、勝手にこんな記事が世間に出たことに動揺し、きっとこの記事の出どころにも思いを馳せただろう。このアウティングという行為は人の尊厳や命まで奪いかねない決して許されぬことで、さとうほなみ演じるりくがたちまち自身の足元がおぼつかなくなり、今にも立っていられないくらいに崩れそうな様子を全身で表現していた。

 それでも「二代目みやべ」のためになんとか不安を打ち消し前進しようとする中、新に料理対決に出る必要はないと言われ、甘えまいと気丈に振る舞おうとするりく。しかしそれをも上回る“社長のことだし予想できる”範囲を遥かに超えた新の愛情深さに、思わず蓋をしていた感情が溢れ出し、おいおい声を上げて泣く。その後、葵からの電話口での詩集の朗読に自分の中にある“本当の自分”を呼び覚ましぶつける凛とした姿は、本当に“勇敢で美しかった”。短時間でりくの心の中に起こったさざ波が大きな渦になり、うねりになり、それを自ら吹っ切る様をその目と焦点に宿し見せてくれた。

 さとうは人気バンド「ゲスの極み乙女」のドラム担当、ほな・いこかとして活動する一方、俳優としてもめざましい活躍を見せている。Netflix映画『彼女』では水原希子とW主演を務め、夫にDVを受け超えてはいけない一線を超える難しい役どころを熱演したのも記憶に新しい。朝ドラ『まんぷく』(NHK総合)や映画『窮鼠はチーズの夢を見る』でも、“その場”を一気に自分のものにしてしまう気になるキャラクターを好演していた。『ファイトソング』(TBS系)では、清原果耶演じる主人公の亡き母親役を演じ、全て回想シーンでの出演だったが、いかにその存在が主人公にとって大きいものなのか強く印象付けた。

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